一応人の料理も食べられるが、2人はサラダとフルーツのみを頼む。
「ジミーくん、ででるよぉ〜。ほらぁ。あ、そぉだ。すこしやいてみるともっとおいしいかもよぉ?」
 アイアンの声につられ、一番端に座るジミーを2人が見る。
彼の目の前には何故か…例のバケツ。
そこから何かを…いや何かはわかるが、
思考内でそれは絶対にあってはならないと拒否したものを口に運んでいる。
そして隣に座るアイアンが逃げ出した…細いものをバケツに戻し、
飛ぶものをつかんではバケツに戻している。
「あれ?うごかなくなっちゃったぁ。あ、ネティーがじゅもんでとめてくれたんだねぇ。
よかったね、ジミーくん。」
 魔物の中にも居るにはいるが、完全な人型の魔界人である2人は受け入れられない。
ただでさえ半分とはいえ鬼の血が入ったキルが時折食べる生肉も嫌になるローズは
もっと受け入れられない。
人の血を飲んでいるのだからたいした変わりは無いはずなのだが…。
 
 
「ベルフェゴ。今度からはちゃんとトイレ流すんだよ?」
「つまった。それよりおかわり。」
「この料理のレシピ欲しいわ!ねぇおじさん、この料理の味付け方法だけど教えて!」
「ポリッター。もう少し静かに食べてくれないかしら?」
「すっすみません!」
「わしのご飯はまだかぃ?あぁこれじゃな。」
「おじ様、それは私のお皿でございます。もうお食べになられましたよ?
…だからさわんじゃねぇよこのボケが。ぁあ?…うふふ。」
「あ…一粒のコメが…。あぁ!!皿…ひッくりかえ…。」
 
 騒がしい中、唯一静かな空間がある。
完璧な作法とマナー。
実に優雅に食べる…エリー。
ネティベルも上品に食べているが、エリーはほどではない。
一人だけ宮殿などに居そうなほど静かに優雅だ。
アサシンでなければどこかの貴族といっても…いやその可能性は否定できないが…。
とにかく、どこぞのパーティーにいてもなんら不思議ではない。
2人はエリーが大体どんな人物かを割り出し、そしてこの惨状を見回し、
頭を抱えると同時に大きすぎるほどの溜息をはいた。
 
((このメンバー…根本的に何か間違えている…))
 
既に自分たちがいることで間違えているも何もないと思うが、そうそうに切り上げ、部屋へと戻る。
「あ、そうだ。ロードクロサイト様、今日は行ったほうがいいんじゃないですか?
お互い血が少ない事ですし…。」
「そう…だな。あぁ、ローズ。」
 支度をしていたローズの肩をがっしりと掴み、声をかける。
いや〜な汗が背を伝い、ローズは思わず固まった。
「確かあの時、腕を差し出した気がするけど…。見事に首…しかも深々と…大量に。
まぁ少しは元気になったことだし…。」
「わっわかりました!では帰って来てから…っつ〜〜〜!!!!!!」
いつもならば口直しの時ローズは身構えているからこそ痛くはなかったが…不意打ち。
しかも力をかなり込めている。変態と言えども痛くないはずが無い。
「万が一次があるとしたら、腕からにしてくれ。もしくは一声。」
「はぁぁあい…。すみませんでしたぁぁ…。」
 悶絶するローズは内心まだチャンスがあると喜ぶが、
そのときもまたこんな仕返しをされてはかなわないとばかりに力のない返事を返す。
 
 
 2人がそっと窓から抜け出し、多数の人から少しずつもらって帰ってきたのは3時間後。
そしてざっと血の匂いを洗い流すと朝食の時間まで眠ることにした。
 
「なんですって!?昨日の晩魔物が現れたんですか?」
朝から町中には魔物の噂が流れ、嫌な雰囲気が流れる。
「でもこの辺…そんな気配はしないかったのに…。」
「そういえば昨日不審な結界を見かけたわ。
かなり広範囲だったから何があったかはわからないけど。」
 チャーリーとネティベルはこの事件に関して頭をめぐらせる。
「貴方達エルフの力ではそういうのは感じられないかしら?」
「そうですね…。確かに微量には感じましたが…はっきりとまでは。
魔族の方のほうが詳しいのでは?」
何気にウェハースへと回すと、本人はジミーから逃げ出したものが入ったスープを前に嘆き、
アイアンがそれごとジミーに渡す。
「気配…。あぁ、たっ確か昨日の晩…ずっと昔に住んでいた場所の…
近くの村人のような気配がしたような気もしないでもないような…。」
「…だめね。襤褸雑巾に聞いた私が馬鹿だわ。今日は町の中を見回って…
それから行動しましょう。そうそう長い場所にとどまっているわけには行かないから
…そうね3日間くらい様子を見ましょう。」