ぱさり、と乾いた音が聞こえる部屋。
一時間ほど聞こえていたのだが、だんだんと音が遠のきがちになり、
ついには席を立ちソファに投げ出す音がし、何の音も聞こえなくなった。
 
「魔王様、おわ……。魔王様…お願いですので早く終わらせていただけませんか?」
 ノックし、入ってきた四天王長…ローズは中の惨状にため息を吐き、
だれているロードクロサイトの傍へと歩み寄った。
「疲れた。寝る。」
「まだほとんど終わってないじゃないですか。駄々こねないでください。」
 ソファにうつぶせになるロードクロサイトはそばにやってきたローズを見上げ、
すねた様に顔を背ける。
 ローズぐらいちっちゃいのがやっていればまだ可愛いものだが、
こうもでかい男がやっている姿はあまり見ていて気持ちのいいものではない。
 まぁ、現在見ているローズ的には呆れると同時に内心可愛いなどとのたまっているのだが。
 
 
「一昨日からずっとやっているんだぞ。そろそろ飽きた。」
 こんなに出来るか!と怒るロードクロサイトにローズはひっそりとため息を吐いた。
その二日でやらなければならなかった巻物は自分らが一日でやっている量だといいたいがぐっと堪える。
「終わったらパフェでも作りますから。」
「パフェか。甘いもの食べれないくせにそういうのは美味いな。」
 終わったものとそうでないものを仕分けるローズの言葉にちょっと心揺れ動く魔王。
だが、すぐに起こしていた上半身を再び落とし、仕様も無い葛藤を始める。
 
「しかし…最近食べたしなぁ。」
「じゃあ血でも吸いますか?」
 どうしたものかと何かで釣ろうとするローズだが、なかなかこのでかいのは動かない。
他に…と考え、このまま動きそうも無いのにため息をはいた。
 
 そうだ、とロードクロサイトが飽きないであろうことを思いつき、
半サキュバスである化身、シィルーズへと姿を変える。
うつ伏せでめんどくさげにしているロードクロサイトの傍にやってくると肩を叩いた。
「なんだ?…!」
「明日までに処理できましたら、一日どこへなりともお付き合いしますよ。」
 顔を上げたロードクロサイトの頬に軽く口付けをするシィルーズは
顔を赤く染めたまま口早に言い、化身化を解きながら部屋を出て行く。
 
 
 残されたロードクロサイトは驚きで目を丸くし、にやりと口元を吊り上げた。
「この手使えるかもしれないな。」
 意図してはいなかったが、棚から牡丹餅的な“餌”に、のってやるかと笑う。
シィルーズに関しては罰だ、代償だといい隅々まで味わったので血の味も何も知り尽くしている。
お気に入りといえば確かにこれ以上の“餌”はない。