地面に叩きつけられた龍―アキラはその場で痙攣し動かなくなる。
一足遅れて4人を包んだ結界が舞い降りるとはじけるようにして消えた。
駆け寄ってくるエージェントたちが何があったのかと問うのとほぼ同時に龍は光に包まれ、人の姿へと縮まってゆく。
すかさずキフィーら医療班が駆け寄るとすぐさま声が飛び交う。
首輪をしていないにもかかわらず純白に戻っていた髪は赤くまだらになっていた。
 
「だめじゃ。早く搬送して処置を。わしは彼らに連絡し至急来てもらうよう手配してくる。キンファーレ、やり方はわかっておるな。」
「はい院長。下がって!!」
 キフィーが何処かへ向かうとキンファーレはアキラの胸に電流をおびた腕を振り下ろす。
 医療呪文であるそれの効果を見るが反応がなかったのか、再び呪文を唱える。
その腕を止める男にキンファーレは振り向く。
「まて、キンファーレ。今は先に魔筋を切ったほうがいい。あっちは弟が受け持つ。」
 突如現れた褐色の肌に濃い緑色の髪の男にキンファーレは驚いたようだが、すぐさま一歩はなれた。
男は尖った爪で空を切るように動かすと以前アキラが怪我をしていた場所と寸分違わない場所から血が流れる。
 男がキンファーレに何か指示を出し、消えると入れ替わるようにグラントが半透明ではあるが現れた。
搬送されていくアキラと医療班にただ見ていることしかできなかった4人が居るところへと漂い近づく。
「あの首輪の電流どうにかならないかなぁ〜。こっちまで痛みが伝わってほんと嫌なんだよね。」
 首をさするグラントは開口一番にそういうととっさに構えたエージェントに向かって苦笑してみせる。
「ゴークさん、もういい加減改良してやってくれないかなぁ。
ずいぶん昔に言ったとおり、あいつ小さいころからあぁやって首輪付けられていたんだんだぜ?訓練以外ではずっと鎖で出られないよう拘束されて…。
鎖がないとはいえ同じだろ。あ、でも勾玉は残してくれよ。」
 顔を曇らせるゴークに淡々と告げると周りでアキラの残したものをサンプルにとる人々を見回し、ロロイを見つけるとそちらに飛んでいく。
 残された3人はメリッサらが自宅まで送りに迎えに来るまでその場に立ち尽くしていた。
 
 
 レオはジャックと共に自宅へと帰ると、ベージュのローブを頭からかぶった人が何かを運んでいた。
 両手に物を持ったその人は足早に病院へと向かっていたが、ローブがどこかに引っかかったのか足を止めローブを引っ張る。
レオが駆け寄りそれを外すとその人は驚いたようだが、女性の声でありがとうといい、裏口へと消えていった。
その後を追うように同じ姿をした背格好からして男性と、キフィーが複数の紙を手に話し合いながら足早に歩く。
 
「デ…ル…様のご判断…核……」
「…は…ネ…様が…大丈夫……じゃ…もう…くは……いじゃろう。内…え…も…」
 キフィーの言葉に男はうつむく。
2人に気がつかないまま彼らはやはり裏口へと消えていった。
 首をかしげるジャックとレオであったが、アキラは無事だろうかと息をはく。
 
 その晩、キフィーとキンファーレは帰ってこず、病院のほうも休み中の医者が出勤し2人分の穴を埋めるかのようにあわただしい空気が流れていた。
 
 深夜、偶然レオは裏口へと隠れるようにして走る黒いマントの女性を見かけたように思えたが、翌朝目覚めた時にはすっかり忘れてしまっていた。