黒髪はいつもより適当に結ばれ、見慣れたローブ姿ではなく見慣れない白い薄生地の着物を着ている。
そして今まで黒い首輪がされていた場所には白い包帯が幾重にも巻かれていた。
 
「どういう意味だ。」
「なんだ、キフィーさんから聞いていないのか。先日のあの贈り物のおかげで内臓辺りが更にだめになった。そのうち昔同様に回復するだろうがしばらくはいらぬ食事を取ることもないだろう。」
 アキラは末端の席に静かに座る。
「また新しい結界でも考案しておかなければな…。わざわざこんな老人の話に出てくることなかろう。」
「そうですが、まともに会議できないようなこの場所に足を運ぶのは後数回程度だと思うんで、俺が死ぬ前にでも見ておこうかと思ったんですよ。」
 
 ロロイが慌てて傍に駆け寄り声をかける。
どこか疲れた様子のアキラは不意に顔を上げ、ゴークとその後ろに居た3人に目を向ける。
 
 
ゴークはアキラの言葉に衝撃を受け、その場に固まってしまった。
「キフィー、どうしてわしに何も…。」
 悲しみに震える声はどこか自分自身を責めるような風にも聞こえる。
「それは…「あなたにだけは知られたくなかった。キフィーさんに無理を言って秘密にしてもらいました。」」
 ロロイと何か話し終えたアキラは席を立ち、扉へ手をかけながら沈んだ声でキフィーをさえぎる。
「それはやはりあの時わしが…お前を…」
「違います!あなたは悪くない。母上を目覚めさせることもできず、他者の血を流すことを恐れる俺が全ての元凶。存在があなたに負荷をかける。これ以上あなたに心配事となるような負荷をかけたくはなかった。」
 扉が閉まり、再び静かになる。キフィーは席を立つと3人を手招きし部屋を後にした。