「キル様、お茶菓子です。」
あ、ありがとうございますといいつつ何度目かなぁとキルは笑顔で受け取る。
普段浮つくことのまったくない2軍だが、今日ばかりは仕方がない。
茶菓子だけでなく中には仕事中履く足袋や普段きるような着物というものもあった。
よいしょっと、と荷物を置くキルにタマモとクラマは顔を上げる。
「おやまぁ、また随分な贈り物の量じゃのぅ」
「今からこれでは後々お屋敷に入りきらなくなるのでは?」
どうした物かとたまった贈り物を見るキルに副将2人は微笑まし気に見つめる。
「クラマは…うわっ…。」
どうだったのかと振り向いたキルは思わず眉をひそめた。
その様子にタマモはくつくつと笑う。
クラマの周辺にはドピンクの小包や新しい烏帽子、
鳥の足状になった右手用の手袋と普通の手袋がセットになった手編みの物や、
烏天狗一族が好きな揚げ物、こってりとした肉料理などがあった。
だが、クラマは頭を抱えたまま深いため息を吐く。
彼は…油物と脂が大嫌いなのだ。
肉よりも野菜という彼にとっては拷問に等しい。
折角の贈り物を嫌いだとは言えず、
毎年のように貰い感謝いたるとつい言ってしまうのが自業自得なところだ。
「女子からの贈り物じゃ。ありがたく食うのじゃのぅ。」
「えぇっとタマモさんは?」
クラマのようには山積みではない。
あぁ、妾かぇというと机の上に袋を置く。
「妾への贈り物は妾が好きな香水や香、美容液などじゃよ。おお、そうじゃ。
妾から2人への贈り物じゃ。」
小さな箱を示し、中から小瓶を取り出す。
さすが知り尽くしているとキルは思うと突然差し出された小さな袋にクラマともども驚く。
あ、ありがとうというがどう見てもお菓子。
それも手作りっぽい。
「妾が作ったゆえ口に合わなかったら悪いのぅ。」
ほっほっほと、笑うと仕事しに行くかねぇと狐火を残し消える。
彼らが今ここにいること自体仕事をしているのだが、
ここでいう“仕事”といえば暗殺か諜報のことだ。
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