お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!

 
 

*変態が変態的な行動をとるため、純粋な方はお読みにならないようご注意願います*
今に始まったことじゃあないですが。
 
 
 
 
「"Trick or treat!"」
 突然差し出されるカゴに、ロードクロサイトが首を傾げていると横からローズがそのかごにお菓子を入れた。
嬉しそうに立ち去っていく人間の子どもは、一様にして“おばけ”の格好をしている。
中には吸血鬼の変装をしている子どももいるようで
【血を吸っちゃうぞ〜!】
と面白おかしく遊んでいる。
 生まれた時から吸血鬼であるロードクロサイトには何が面白いのかさっぱりわからなかった。
それよりもいろいろ間違えているところを指摘してやりたい。
 
 
「そっか・・・今日はハロウィンか。懐かしいな〜。だからお菓子用意してあったんだ。」
「ハロウィン?」
 懐かしんでいるローズにロードクロサイトはさらに首を傾げる。
「あ、ご存じないですか?今日はハロウィンって言って、子どもがお化けの格好…
というか、魔界人・・魔人とか魔物の姿を真似てその姿のままお菓子をもらいに来る行事です。
僕も小さい頃やってましたよ。吸血鬼の格好をして★まさか本物になるなんて思ってもみませんでしたけど。」
 傾げたロードクロサイトの首筋に眼を奪われながらも、ぐっと堪えつつ説明をする。
 
「何が楽しいんだ?それにさっきの掛け声・・・お菓子をくれなきゃ悪戯するぞとは???」
「風習なんですって。本来は収穫祭のはずだったと思うんですけど・・・、
この夜は霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女がくると信じられていて、
身を守る為に仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いていたらしいんですよ。
今じゃあただの子どもの小さな脅迫まがいな行事ですけど。」
 年中来るといえば来るんですけどね。
そういってローズが笑っていると、今度は豚・・・じゃなくてベルフェゴがきた。
どうやらミノタウロスのようだが・・・豚に見える。
 
 
「お菓子くれないと斬る。だから、よこせ。」
「「・・・・・」」
無言のままローズは差し出されたかごにお菓子を1つ入れた。
「…ふぅ(ーAー)」
「……(・A・)」
 また1つ。 
「…は(¬A¬)」
「……(゜A゜)」
 今度は2つ。
「…はぁ( ´A`)」
「……ぁ?(#゜Д゜)」
 さらに2つ 大きめのチョコ。
まだ差し出したままのカゴを見たローズはいっそのこままくびり締めたろうかと、殺気を漂わせた。
ふと、何を思い立ったのか、発達した八重歯をギラリと見せ付ける。
それに一瞬ひるんだ獲物を見逃すはずがない。
「今夜僕は吸血鬼。たっぷり血の詰まってそうな子牛はどうやって食べてしまおうかな。」
 にやりと笑って見せると、ベルフェゴは一目散に逃げていった。
「あ、ローズさん、ロードクロサイトさん。2人とも吸血鬼に仮装してるんですか?
一番手っ取り早いですからね。特にお2人とも耳が長いので、牙をつけるだけですもんね。」
 どうやら先ほどのやり取りを見ていたらしく、チャーリーが笑顔で言う。
そんな彼は背中に蝙蝠羽をつけていた。
「僕は魔人ですけど、蝙蝠羽って吸血鬼ぐらいですよね。」
 それでは、と弟を追いかけて立ち去っていく姿を見ていた2人だが、魔人に蝙蝠羽が生えているのはその他人種がいることを心の中で付け足した。
実際、インキュバスもサキュバスも蝙蝠羽を所有している。