とりっくおあとりーと!

 
 
 
 
 
 
そして当日。
「今日の剣術は終わり。今日はハロウィーンだからな。
 羽目を外しすぎないよう楽しむんだぞ。」
 剣を収めるソーズマンの父、クレイは子供たちの頭を撫でる。
「それじゃあ後で迎えに行くからな!」
 じゃあね、と言う2人にクレイは子供らしいなぁと笑う。
普段ほとんど子供らしいところを見せない、
チューベローズが楽しそうに笑っているのは本当に久しぶりだ。
 
 黒いローブに身を包んだソーズマンは額に角をつけ、ローズを迎えに行く。
脅かしてやろうとわくわくしていると、構える。
「ごめんねーソーズマン君。今でるから。」
「ソーズマン!わっ!びっくりしたー。」
 勢いよく出てきた毛玉を驚かせたソーズマンはチューベローズの姿に逆に驚いた。
「どう?猫をモチーフにしたの。すっごくかわいいでしょう。」
「でもコップが持ちにくいんだ…。どうかしたの?ソーズマン。」
 銀色の髪から覗くのは白い三角の耳。
そして両手には肉球のついた手袋をし、お尻には尻尾が付いている。
首には鈴のついた紐をつけ、動くたびに涼しげな音がマフラーの上から聞こえる小さくなった。
「いっぱいお菓子もらえるといいね。」
 笑うチューベローズは手に提げた籠を振り、ソーズマンの顔をうかがう。
「おっおう。一緒に行こうぜ!」
「もう本当ハロウィン楽しいわ。そうだわ。
 チューベローズ、ソーズマン、お母さんとお父さんには言ってくれないの?」
 可愛いわーと子供を抱き上げるシュリーは猫耳を手で直し、髪を整える。
シュリーに言われたチューベローズは、降ろしてもらうと籠を抱えなおし、
笑顔で籠をシュリーに差し出した。
「あ、えぇっと…トリッ…アト…リト?」
「Trick or treat!」
「はい。これ。気をつけて行って来るのよ。」
 差し出された2つの籠に木の実を入れると嬉しそうな子供たちの頭を撫で手を振る。
 
 
「トリック…トリー!」
「Trick or treat!」
「はいはい。ほら、お菓子。可愛い猫ちゃんにはひとつおまけね。」
 チューベローズの隣家にやってきた二人に準備していたであろうお菓子を入れる。
あっ!というソーズマンにチューベローズは得意げな顔をすると行くよーと先に行ってしまった。
「まてよもう!あんにゃろ…。」
 慌てて追いかけるソーズマンに笑う。
 
「トリック…ト!」
「Trick or treat…お前もう少し頑張れよ…。」
 どうしてもいえないチューベローズにソーズマンはやれやれとため息をついた。
そんなチューベローズの頭を撫でる女性は仕方ないさと言う。
「あははは。まぁ仕方ないさ。チューベローズは。喋るの遅かったんだし。
 それで…チューベローズ。悪戯って何するつもりだったんだい?」
「え?いたずら?」
「俺に聞くなよ。そういうもんなの?」
 ぽかんとするチューベローズは何でも知っていると思っているソーズマンを見るが、
ソーズマンも知らないと首を振る。
「Trick or treatっていうのはまぁお菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!
 っていう意味なんだってさ。」
「あぁなるほど。とうちゃんそこまで教えてくれなかったからなぁ…。」
 意味までわからなかったというソーズマンにチューベローズもなんとなく頷いた。
「えぇっと…悪戯…。それじゃあ…」
 さっき言われたことを思い出したチューベローズは悪戯…と考え、
手袋に付いた肉球を押し付ける。
悪戯というようなことではないが、チューベローズなりに悪戯しているつもりらしい。
その様子を隣で見ていた旦那が2人の籠にお菓子を追加する。
「かぁいいなぁ。」
 女性はひとしきり悪戯し終えたチューベローズの頭をよしよし、と撫で、次へ促した。
行く先々で頭を撫でられたチューベローズは、
ソーズマンに髪を直してもらいながら籠を見ると嬉しそうに微笑んだ。
村の中を回り終える頃には2人の籠はパンパンにまでなっていたのだ。
「よ〜〜っし!そろそろ家に帰ろうぜ。」
「うん!あ、ソーズマン待って…いたっ!」
 行こうと言うソーズマンを追いかけようとし、
足をもたつかせたチューベローズはその場に転ぶ。
その場にお菓子が転がり出るが、幸いそれほど落ちてはいない。
すぐにソーズマンが手を貸し、引っ張る。
「あ〜あ。大丈夫か?ほら、もう家すぐそこだか、な?」
 服や腕に付いた泥を払うソーズマンにチューベローズは起き上がった。
若干目が潤んでいるがそんなことでは泣かなくなったチューベローズはそこでぐっと堪える。
 
「うん…。あ!そうだ!忘れてた!」
「ん?」
 籠にお菓子をつめなおすと何かを思い出したチューベローズは急に笑顔になり、
籠をソーズマンに向けた。
「Trick or treat!」
 
 
 
fin
 



ローズ初めてのハロウィンです。
ソーズマンがしっかりしているのは大体こいつのせい(笑)
7歳と6歳ですが、見えないですね。

言葉が遅いというのは諸事情で2歳までほとんど話していなかったからです。
部屋で〜というのは「異形の子」でなんとなく触れてます。
いや〜〜〜。今年もハロウィンですね。猫仮装は私の趣味です。
クロさんたちは普通に魔物なのでローズ関連が主ですね。