皆に知られたくなくて必死に隠して…。
でもやめることが出来なくて。
みんなの闇を知りながらも皆に笑って、隠すのに悲しくて…。
でもそれはすぐにばれてしまった。ソーズマンがあとをつけていることは知っていた。
けど、とめることはできなかった。
止めたら…理性を戻していたらきっと僕は死んでいた。
僕と言う存在は消えうせていた。
 
 朝、ソーズマンだけには打ち明けようと思いながら…。
ソーズマンを呼ぼうとしたら皆起きていた。
言えないと思ったけど皆知っているように思えたからだからもしかしてって思ったんだ。
だけど意気地なしだから皆にいえなかった。
やっぱり誰も理解してくれなくて、皆勇者の印勇者の印って…。
それが悲しかった。
天界に行ったとき、全部声は聞こえていた。
僕は誰からも必要とされれていて、誰からも僕は必要とされなかった。
必要だったのは僕じゃなくて勇者の力。
僕が存在するためには魔王を倒さなきゃいけなかった。でもできなかった。
唯一、僕を勇者としてでなく僕としてみてくれた“人”を倒すことなんて、
出来るはずがなかった。
「キスケ、君は僕を見捨てないのかい?」
 唯一、ずっとそばにいてくれた相棒のハムスター、キスケに尋ねると伸ばした腕を駆け上りふわふわとした身体をこすり付けてくる。
暖かい。
それが無性に嬉しかった。
「ごめんね…。意気地なしで。
 僕は…魔王を倒せず、こんなところで泣いている弱虫なんだ。」
 必死に身体を摺り寄せてくるキスケが眼からこぼれた涙をもふき取ってくれる。
撫でてあげると、嬉しそうに鳴いて肩につかまる。
まだ勇者の紋がある以上、僕にはまだ役目があるはずだ。
この僕が僕であるためにできること。
 
まだ答えは見えない。
 
まだ探さなきゃいけない。
 
一体何が出来るのかを。
僕はまだ冒険を終えるわけにはいかないんだ。
 
 
 
 
たとえ人でなくなっても。
 
 
 
 ごめんねユー。僕は…君の前には帰れない。
 

 
-fin