朝、目が覚めた少年は寒さに丸くなりかけ、勢いよく跳ね起きた。
縁側に続く戸を開ければ一面の紅葉の世界。
昨日の風で落ち葉が積もったんだ、とうきうきする少年は朝食を取ると一目散に村の広場へと走って行った。
「おはようソーズマンくん。」
「おはよう!遊ぼう!!」
赤茶色の髪を靡かせ走って来たソーズマンは村の仲のいい少年に声をかけ、ふかふかとした落ち葉の中を転げ回る。
ふと、ソーズマンが顔を上げると自分の家の隣…村の隅のほうにある家の打ちつけられている板の周りに、あまり仲の良くない少し年上の少年らが集まっているのを目に入れた。
板の隙間から石を投げ入れ、ひとしきり笑った後立ち去っていく。
「あそこ、こわ〜〜いお化けがいるんだって。」
ソーズマンの視線に気がついた少年は何でもないことのようにいい、親友の反応を待つ。
「知ってる。でも父ちゃんに聞くとすっごい怒られるから見てない。」
「じゃあ見に行こう!石投げ入れてたからおとなしいよ。」
近くに行ったことすらない、というソーズマンに少年は見に行こうというと駆け出していく。
どうしよう、と迷うソーズマンだが好奇心に負けて板のそばへとやって来た。
そっと穴から中を見ると、暗い部屋はあまりみえない。
よく目を凝らしていると慣れてきたのか薄い毛布が見えた。もぞもぞと動くと不意に青い目がソーズマンと会う。
痩せた様子でこちらを見つめる髪も肌も白いお化けにソーズマンはぎくりと肩を震わせた。
「あれって…。」
「こらっ!!ソーズマン!!」
思わず出た言葉にお化けは怯え、さらに聞こえた怒鳴り声にすっぽりと毛布をかぶってしまう。
いつの間にか逃げた友人に怒る間もなく、ソーズマンは家へと強制的に帰らされた。
たっぷり怒られてから一週間後、初雪が積もりソーズマンは再び村の子供たちと遊んでいた。
ふと、気になってまたお化けの家を見ると板が外されている。
父は今町に出稼ぎにいっているため、またみようと思ったソーズマンだったが、様子が変わったことに首を傾げた。
「お化けね、やっといなくなったんだって。」
ソーズマンに気が付いた一人が言うと面白かったのにねーと何人かが残念がる。
あれは何だったのだろうと、もやもやとする気持ちをもったまま、数日がたった。
夜大騒ぎして森に出かけて行った人々が帰ってくる声に目を覚まし、ソーズマンはそっと窓から外を見つめていた。
月明かりに見えるのはお化けの家に住むホスターおじさんと、数人の大人たち。
そしてそのおじさんの腕に抱かれた白いもの。
直感であの子だ、と考えるもこの騒ぎ方はおかしい。
やっとお化けがいなくなったと村長も言っていたのに、なぜかよかったよかったといいながら家に帰る人。
幼心にもおかしいなと首をかしげていたのだった。
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