頭痛、吐き気、胸焼けを訴えるものが後を立たない中、
そろそろ行こうかしら、というエメラルダの言葉に全員声にならない歓声を上げた。
滞在日数最長記録更新の14日。
鉢合わせるたびに血を吸われていた四天王長も、
寝室で伝えられたその知らせにほっと胸をなでおろす。
四軍だけはまだまだ仕事があるが、
床から回復次第見張りを命じられていたものは、その知らせに座り込みそうになるほど。
「それじゃあねクゥーちゃん。またぐる〜っとしたら来るかも。
他の子に負けて魔王の座を取られちゃだめよ?ここ快適だものね。」
「わかったからさっさと行け。私が誰かにおめおめと負けるわけないだろう。
さっさと地上なり天界なり、魔界なり行ってくれ。そして2度とくるな。」
やっぱ小さい子はかわいいわ〜とキルを撫でるエメラルダに、
ロードクロサイトはさっさと出て行けと追い立てる。
「も〜テレ屋さんだから〜。」
「ロードクロサイトもなんだかんだいいながら楽しみにしてくれているんだ。
また今度立ち寄ろう。」
「誰が…誰が嬉しがっていると!?
放って置けば物は壊すわ、四天王長の血を吸うわ、
迷惑極まりないやり取りで体調不良を訴えるものが多いわ…。
事前に対策しなければこの倍以上迷惑が掛かるんだ!!
毎回毎回…どうしても気になるなら蝙蝠でもよこしてここには来るなと何度…。」
最近の子は怒り易いわね、というエメラルダをクラトカは年頃なのだ、という。
そのやり取りに青筋を立てたロードクロサイトは、
この城に夫婦が現れてからというもの、言っていることを繰り返した。
「じゃあねぇ〜。クラトカ、行きましょう。」
「それではな。ロードクロサイト。エメラルダのような伴侶が見つかることを祈っている。」
「一番いらない伴侶だな。」
来る時とは違い、クラトカの裾から飛び出した無数の蝙蝠が夫婦を囲むんだ。
蝙蝠が消える頃には夫婦の姿も消え、
やり取りに慣れている息子と幼馴染以外は、精魂果てたかのようにその場に突っ伏す。
そして10年くらいで懲りずに、再びやってくる夫婦であったりする。
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