ローズは準備万端でロードクロサイト同様のローブを身にまとっている。
それでもやはり日の光はこたえるのかずっと目を細めたままだ。
純粋な吸血鬼と違って彼はもう1つの闇の生物、インキュバスの血をも引いているため
朝日が一番辛いらしい。
どうしてこうなったかは彼の本質的なものにより、魔族へと身体を作りかえる行程で
決まってしまったようだ。
もちろん、その時使ったのは勇者の印を持つものの願いをかなえる伝説の道具であり、
その神器は既に使えなくなっている。
魔王を倒すや、強くなりたいなどと言う願い以外はかなえる道具…。
平和のために使われるはずのそれが、勇者を魔族へと変えたなど…
勇者の印を与えるという神はさぞかし衝撃的であっただろう。
しかも現在最強の魔王にぞっこん。
本人は気がついていないことだが。
「…今思えば神々もまた不幸な。」
「どうかしましたか?ロードクロサイト様ぁん。」
とりあえずいつものように笑っているため、ロードクロサイトはほうっておく事にした。
待ち合わせ時間から一時間後…
ようやく現れた勇者一向に従者であるという説明をし、同行の許可をもらう。
「ということは、クロさんは結構上の身分のエルフなんですね!」
再び目を輝かせるポリッター。その言葉にローズは勢いよく頷く。
「まぁロード(君主)ですものね。多分とは思っていたけれど…。」
「ろーどってなに?あ、もしかしてよくまちのみちひょうじにある…」
「確かにそうだけど、アイアンさん。ロード…つまり君主って言う意味だよ。イングリシウ語だったと思うけど…。」
古代の言葉とされるイングリシウ語だが、実を言えば魔族たちが良く引用する事が多い言葉であったりする。知られていないと思っていた二人はネティベルとチャーリーの発言に内心驚いた。
人ではほとんど知られていないはずの言葉…。
まぁ魔導師ならば魔道書がそれだったりなので知っているのもわかるが…
やはり天の認めた真の勇者。
頭の出来からしても弟とはまるで違う。
「ところで…ローズさん。貴方の顔…どこかで見たような気がするのですが…。」
しげしげと見つめるチャーリーの言葉にローズは一瞬考える…。
どこかでみたような顔なのだ。本人ではないが、別の人を知っていそうな気がするのだ。
結局会った事はないと思うと言い、一行は次なる町へと向かった。
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