空いていた席に座るロードクロサイトに飛びつくローズ。
最近では日常茶飯事にあったためロードクロサイトは気にせずそのままにしていたが、
他の選手からしてみればあの2人は一体何なのかとひそひそと話し始める。
当然耳のよい彼らには聞こえるが、いち早くローズはロードクロサイトに話しかけ、
背後から聞こえる会話が彼に耳に入らないよう注意しながら会話をした。
 
 
「そういえばさっきロードクロサイト様が登録している時に聞いたんですけど、
あいつら以外に勇者一行と名乗っているのがいるらしいですよ?」
「あ〜〜そういえば昨日の晩から変な連中を見かけていたなぁ…。それか?」
「知りませんよ。あ、でもあの剣士…まぁ僕らが言うのもですが白魔導師と組んでいる辺りもしかしたらその一行の一人かもしれませんね。」
 
 
 今の時代は一体どうなっているんだとローズは遠くを見つめる。
あの頃は自分らの他にも勇者となのるものがいて、
その地域だけを護るものもいたがそれでもその村や町からは尊敬され…。
て言うかパーティー人数少なかったしと、今の人数を振り返る。
11人…倍だなぁとため息をついた。
 
「ところでローズ…重い。」
 抱きつくなと追い払うと対戦表を確認する。
離れたローズも対戦表を見ると心の中でご臨終という。
次の生贄…対戦相手はあの剣士だ。
「いっそのこと魔法強化でも唱えてあの補助魔法を強化して戦うか?」
「絶対死にますからやめてください。」
 本気でやりかねないととめると、案の定不服そうな顔で仕方ないとしぶしぶ承諾する。
 あんたは何歳だぁといいたくなるが、天然で子供っぽい魔王様も素敵だとローズは内心悶える。
まぁ背を向けているロードクロサイトには見えないだけで、いや〜〜〜んな色をしたオーラが背後に向かって垂れ流しになっており、いろいろな意味で全員は眼を背ける。
 
 第2戦では先ほどの控え室でのことを忘れたいがためか、観客がおおっと歓声を上げるほど白熱した戦いが行われていた。
 
 そしていよいよロードクロサイト対やや負傷気味の剣士の戦いが始まった。
 白魔導師の隣にはいつのまにかあの占い師っぽい女性がおり、何か話し合っている。
 賢者かとロードクロサイトは判断するが何をするのかと横目で伺う。
とりあえず一回戦同様補助をすることになったようだが、気づきにくい程度の妨害魔法まで唱えられた。普通の戦士や魔法使いなら気づかないであろうそれも、ロードクロサイトには丸見えで薄い魔法の膜で体を覆い防ぐ。
 一応貸し出し用のロッドを手に持っていたが剣士の繰り出す攻撃を受け流し、レベルを図った。
可もなく不可もない程度か…とローズの軍だったら最下位の隊だなとぼんやり思っていると、キルが四天王になる前散々聞いていたローズ軍一の駄目剣士を思い出した。
どの戦地に行っても味方に迷惑をかけるわ、一個隊を壊滅しかけるわ…。
そういえばあの後異動させられ、逃亡したとか…。
下から振り上げたロッドで剣を弾き飛ばすと軽いけりをいれ、倒れたところで顔のすぐ脇に突き刺す。補助魔法が消える頃、審判はロードクロサイトの勝ちであることを会場に知らせた。
 
 
「何か考え事でもしてましたか?」
 ロードクロサイトの異変は絶対見逃すものかとばかりに見ていたローズは首をかしげる。
「やっとこの前のキルが言っていた重大犯罪者のことを思い出したんだ。
確かにあれは重罪人だったな。」
 あぁ、とローズもその犯罪者のことを思い返す。
魔剣士の癖にまったく使えないあのへぼ剣士。
一族からはかなり有名な剣士もいるというのに何故か直系のあれだけは才能の欠片もなく、かといってほかのことができるわけでもなく…。
 
「“薄い木”ですか。誰が言い出したんですっけ?」
「確か…祖父の弟の…私の直属親衛隊の隊長を勤めている魔剣士ストロンガスからだったはずだ。一番隊の…。」
「自分の軍の各部隊長ぐらいわかりますよ。さすがに一族最強とあってよく打ち合いしますけど呪文が使える分僕が強いだけで剣だけなら僕をしのぐと思います。
…まぁ副将の座も四天王の座も要らないそうですが…。」
 あれだけの実力ならもったいないなぁというローズは魔剣士一族の末端にいる弟子を思い出す。
また来るといっていたからには絶対来るだろう。