儀式は滞りなく行なわれたのであった。
立食パーティーともなればキルの周りには自軍の部下となる者達がひれ伏し、簡単な挨拶を済ませるとそれぞれの場所へと散ってゆく。
「よかったのぅ。さて、次期副将の試験頑張ってみようかねぇ?」
「あぁ、タマモさん。…今日はまた一段と…。」
 声に振り返るなりキルは思わず固まる。
どうみても艶やかな振袖にしかみえない…というよりも振袖なのだろう。
それに身を包みピンヒールをはき髪にかんざしを指した姿は女形そのもの。
「ほほほ。美しいかぇ?妾の一族は強きものが雄となり、弱きものが雌となる。
番を結んでおればたとえ強きものでも雌になることはあるがのぅ。」
「タマモさんは…雄ですよね…。」
「妾は雄じゃ。だがのう、妾は成人前と変わらず両性のままなのよ気持ちではの。」
 彼ら九狐一族の生態が何なのか部外者であるキルにはわからなかったが、これも広い魔界の一族なのだろうと納得する。
というかそう思わなければやっていけない。
一族きっての切れ者と言われているタマモが副将になってくれるのならば心強いかもしれないなと、試験頑張ってくださいと声をかける。
 
一応目星では一人は決めている。
 烏天狗一族の問題児であり、気配を消す能力も殺傷能力も暗殺と諜報面ではキルの次にいる青年…ヤタガラス=ジラヤ=クラマ。
副将にすればおそらく最年少の副将となるだろうその青年を探す。
 
 
「クラマ、探した。」
「キル…様。どうかなされたか?」
 他の烏天狗から離れたところにいる青年を見つけ、声をかける。
背に生えた漆黒の翼に青みがかった黒い髪。常に口元が隠されているのは彼ら一族の慣わしだ。
「プライベートはキルでいいって。クラマさえよければ僕の補佐になってほしいんだ。
実力も申し分ないのだし、なにより僕の素を知っている数少ない知人だし気が楽なんだ。」
 クラマも年上だけど話やすいというキルにクラマはしばし言葉を失う。
補佐ということは四天王の次に偉い副将だということだ。
そんな席に自分なんかがしてもいいのかと、言葉を疑う。
「断る理由でもありますか?」
 にやりと仕事中見せる上司面で敬語を使う。漂う威圧感に我に返ると首を振った。
「いっいえ、そんなことござらん。しっしかし某がそのような大任…。」
「実力がなければいくら馴染みでも声はかけませんよ。それに私のほうがかなりプレッシャーのかかる大任であることを忘れないで下さいよ。」
 未成年なのにいきなり四天王の一角ですよ、と笑うキルにクラマもそうれもそうですかと微笑む。
「では某もその大任承りましょう。」
「後日正式な書類をお渡しします。私の部屋に来てください。もう一人の副将は…きっとタマモになりそうですので今までとあまりかわらなそうです。」
「あのお人は実力隠しておりますゆえに確実でしょう。」
 
 後日、2人の予測どおり何食わぬ顔をしたタマモを加えた3人は黙々と業務をこなし、その強さとキルの持つカリスマ的な魅力に軍が一丸となり魔界最強の暗殺部隊が結成された。
 
 
 
ーfin



 ということでキルの四天王就任短編です。
タマモはれっきとした男ですが、オカマです。
でもだからといってニューハーフにはならないという…同じじゃないのか(笑)
部下は皆、孫を見る目でキルを見てます。
のでカリスマもあるけど、家族のような雰囲気をした一軍です。かなり物騒な分野だけどね。