貧しいわけではないが、日々稼ぎの少ない父を目にしてきた息子は、勉強に励みに励みわずか20歳で魔界の大学を卒業。
その後父に内緒で魔王軍へと志願し、見事試験に合格。
稼ぎの7割を母に渡し生活を父に代わって支えていた。
「ノーブリー、四天王策士のホースディールの後釜にぬしの名前載っておったぞ。」
突然同僚…とはいえ自分よりはるかに年齢の高い妖狐タマモ…
正式名をハッコン=ミズクメ=タマモという銀髪で長髪の青年にしか見えない彼に声をかけられ、ノーブリーは首をかしげる。
かれこれ7.8年しか勤めていない彼が推薦に名が挙がるのはどう考えてもおかしい。
そう彼は思ったのだ。
「しかし…23年も四天王の策士の座が空白だったとは…我らの力も地上の勇者ほどではないが衰えてしまったのかねぇ。」
「…自分が生まれる12年前で今私は28。40年です。」
確か60歳歳の離れた元勇者で今現在四天王長についている突飛な男が48のときホースディールは退職している。
「かわいくないのぅ。もっとも鬼一族の中でも特に優秀な人材が多く生まれる本家ご長女の息子ということを裏付けるかのように得意まれな才能と知識を持った若き天才。
十分な素質があるとは思うがのぅ。」
「しかし自分は“あの”魔剣士を父に持つ純粋な鬼ではありません。」
先ほどの元勇者…ジキタリスの部隊にいる父の評判はあまりよくは無い。
それゆえに入隊当初は若いということもあり散々な目にあったことがある。
苦々しい記憶に自然彼の眉は寄っていた。
「難しい魔剣を扱えるし鬼の呪文も使える、まさにジキタリス殿と同じく魔法の使える剣士ではないか。
もっとも先日行われた総合試験においての成績で該当者が現れたという噂じゃが…」
さぁどうなることやらと、言いうと独特の女性のような笑い声を残しタマモは狐火で消える。
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