「本当にクラマは2軍の皆さんと仲がいいのね。」
「タマモ殿は優秀な方で某では到底及ばないほどの力と才能をお持ちの方ではあるが…。」
この癖だけはと呟くクラマにセヤは寄り添うと四天王の方は?と問う。
その言葉にクラマは月を見上げながら顔をほころばせた。
「キ…ノーブリー様は本当にすごい方で、歳はまだセッカ達とほとんど変わらないのに
その実力を魔王様にかわれて任命されて…。
それに四天王長様より直々に剣を習い学んでいく様。
次々と新しき情報を得るその速さ。
次期鬼一族当主とだけあって某にはまぶしい方です。
でも某達には友達だと接してくださって…。」
先ほどまでの緊張した口調とは違い、嬉々として話す姿にセヤは笑いを堪え、
話を促す。
「そうだ。四天王長様に…。えぇっとその…。
なっなにか贈り物をしたく、ジキタリス様やタマモ殿に相談して…。
その…。えっと…きっ気に入ってくれればよいのだが…。」
はたと思い出したクラマは握られた手に気が付き、
あわあわとするともう片手で小箱を取り出した。
「なにかしら?あら、キレイな髪留め。いただいてもいいの?」
クラマから手を離し、両手で受け取るセヤは箱を開け、嬉しそうに微笑む。
中に入っていたのは白い花の横に赤い小さな花が流れるようにさがった髪留めであった。
すぐさま自分の髪に刺すと軽やかに聞こえるシャラシャラとした音に、
ありがとうとこれ以上ないほど微笑む。
「どう?似合うかしら?」
「もっもちろん!」
顔半分を覆う覆面をずらし、もう一度ありがとう、
と言うセヤにクラマも同じように覆面をずらし、どういたしまして、と微笑み返す。
「タマモ殿!それは違う情報でこちらが正しい…あ、キル様。
こちらまとめましたのでご確認を。」
満月が終わり、鴉天狗たちの紅葉狩りが終わった2軍執務室では、
いつもどおりのピンと張り詰めた空気の中てきぱきと動く姿があった。
「ほんとまじめにやっておる時は本当に仕事が早いのぅ。」
席に戻り、巻き物をピシッとずれなく巻くと棚に戻し、退出の礼をとる。
「クラマはまじめな時は本当に有能なのに…。タマモさんは紅葉狩りしないんですか?」
「妾たちは三日月の晩に行うゆえ、あと2週間後に行うことになっておる。
キル殿も紅葉狩りはしないのかぇ?」
あのボケ週間でたまってた仕事をほとんど片付けたクラマが帰ると、
互いに紅葉の話をする。
「鬼一族は飲む口実があればお祭り騒ぎですから。
魔王様、ジキタリス様も例年通りお誘いしますし、
ジキタリス様のお庭でも今度お茶をしようと誘われてます。
時間が合えば副将の皆さんもといってましたね。」
「そういえばジキタリス殿の庭が色付いておったのぅ。」
楽しみじゃと扇子を閉じるタマモにキルも笑うと、
月夜を飛ぶ2羽のヤタガラスに眼を移した。
-fin
|