「そういえば…タマモさんは銀狐っていう九尾一族の中でも
特殊な存在なんですよね?銀狐と金狐…。どう特殊なんでしょう?」
どの文献にも歴代の巻き物にも載っていない、
と言うキルにタマモは顔を上げ、そうじゃなぁと首をかしげる。
「妾達は魔力などの違いと思っておる。急にどうしたのかぇ?」
「そうですか。種族ごとにいろいろ秘密なことが多くて覚えるの大変なんですよ。」
「某たちはこの覆面の下は一族の最重要機密ですから。
それと同じようなものでしょう。そうそう。タマモ殿。
某は下に妹と弟の計5人の兄弟であるがタマモ殿は本当に1人だけなのか?」
首をかしげ問うタマモにキルは広げていた書類に何か書き足し、
軽く頭を筆の柄で叩いた。
帰る準備をしていたクラマは手を止め、そういえばと切り出す。
「妾の兄弟?そうじゃの…。いるといえばいるがいないといえばいない。
さてどうじゃろうな。」
「どうせはぐらかされると思ってましたよ。
それとジキタリス様が執務が終わってからでいいので屋敷に来てほしいとのこと。
それでは。」
扇子で口元を隠し、面白いという眼をクラマに向けるタマモは9本の尾を揺らす。
クラマはその様子にやれやれとため息をつくとその場を立ち去った。
「ジキタリス殿が…。あぁ、そうじゃそうじゃ。
よい染料が取れぬか聞いておったのじゃ。」
「新しい着物…というよりも振袖ですか?」
早く織り鶴の元に持って行きたい、
と上機嫌に9本の尾を揺らすタマモにキルはやや呆れたように声をかける。
「着物は何着持っていてもよいものじゃ。
それにジキタリス殿の庭で取れる植物はよい物ばかりで、
特別な着物を作らせる時にしか頼んだりはしておらん。
妾の甥がどうしてもと頼んできての…妾の分を頼むついでにとの。」
これは普通に織り鶴たちが量をと作ったもので、そこまでいいものではないという。
「甥がいたんですか。一族でも金狐の次の地位である銀狐に頼みごとなんて、
金狐でなければしませんよね。」
現在の双対の当主ですものね、と笑うキルにタマモは感心したように目を瞬かせる。
「まぁそうじゃな。キル殿は知っておったじゃろう。」
「なかなか大変でしたけどね。
そうだ…今度母に何か着物を見立ててもらってもいいでしょうか?
少し小さめのも見立ててもらえると嬉しいのですが。」
にっこりと笑うキルにタマモは心得たと返す。
「本当にシヴァル殿はジキタリス様に夢中のようじゃな。」
ふふふ、と笑うタマモにキルは肩をすくめて見せた。
しばらくタマモは色付いた葉を眺めながら楽しげに絵柄を考えるのであった。
fin
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