そういえばあの時少ない言葉の中に眼のことを言っていたなと思い出した。
そのまま今住んでいる屋敷へとやってきた。
そこでお目付け役兼世話役として家政婦長…
そして本業に3軍の四天王代理をも勤めていたシャムリンらに言葉を教わり、
魔界人としての知識を身に付けていった。
首に光るペンダントを眺めていたセイは静かな室内に気がついた。
普段なら書き物をしている音がするのだが、それもない。
静かな寝息を立てるローズに気がつくとまったく、と呟き傍へと向かう。
熟睡している姿にそっと抱き上げるとソファーへと横たえる。
脇に用意していた掛け物でローズの身体を覆い、顔に掛かった髪をどけた。
自分の命を助け、故郷を取り戻してくれた恩人にセイは今仕えている。
あれから5年。
ハナモモは師匠であったストロンガスを抜き副将になった。
そして自分もまた副将になり、軍を、魔王を、恩人を支える立場になった。
一ヶ月の間に何度も寝込んでしまうほど身体の弱い恩人は今眠りについている。
魔王の次に強いのだが、どうにも身体が弱い。
そしてあの時自分を助けてくれたように優しい。
ぐっすりと眠る姿にセイはそっと笑うと跪き、眠っているジキタリスに頭をたれる。
魔王に忠誠を誓う四天王長…。大切な恩人…。
父のようであり、弟のようであり…。大切な家族。
貴方が私の運命を変えた。生き方を変えた…。
そのために湖では見なかった風景を見、風を感じ、数多くの魔界人を見てこられた。
全てを変えた貴方に…貴方に忠誠を誓います。
貴方がもし死にたいと願うならば、貴方の望む死を与えましょう。
貴方が私に死を望むのならば身をささげましょう。
貴方に心からの忠誠を。
-fin
|