視界から消える闇・・・いや身の丈の3倍はある巨大な漆黒の翼が開かれ黒い髪が風に揺れる。
「やっと本領発揮か・・・。アキラ。」
「貴様と話している時間はない。」
 3人から手を離し、翼をしまう。髪は漆黒。赤い目は徐々に澄んだ青い色へと戻る。
レオ達が驚く間もなく、アキラの姿が掻き消え剣だけが地面へと突き刺さっていた。
龍の口から出ている光が3人をドーム上に包み結界を張る。
瞬く間に破黒以外の魔族が致命傷ではないものの深い傷を負いその場に倒れ、
泥人形はことごとく破壊され、魔獣ですらも跡形もなく消え去った。
破黒が何処からともなく薙刀を取り出すと目の前に掲げる。
途端に甲高い金属音が聞こえ、アキラが姿を現した。
「どうした・・・息があがっているようだが?」
「関係ないことだろう。それよりどうした・・・余興は終わりか?」
 弾かれるようにして後ろにとんだアキラが伸びた爪を短く構える。
「あぁ。そうだとも。帰らせてもらうとするよ。まぁ・・・貴様の血が新たに手に入ったことだ・・。次の魔獣でも期待しておいてくれ。」
 破黒はアキラと同じトペレテと唱え消えていく。
動かなかったアキラだが突然脇腹から血が吹き出しうずくまる様にして倒れてしまった。
それと同時に結界が消える。
 
 
生々しい光景に足がすくみ、駆け寄るべきなのか否か頭の中をいたずらに滑っていくばかり…。
「ま〜た派手にやったもんじゃなぁ・・。止血の準備を。レオ、無事か?」
 突然現れたキフィーを含めた救護班とロロイなどが3人の周りに降り立ち、
救護班がアキラを囲む。あっけにとられた3人にキフィーが振り向く。
「おじいちゃん!?どうして・・・。」
「あいつの首輪が取れたのとロッサからの救援依頼でな。まったく。今日は新月だという事を忘れたわけじゃああるまい。」
 首輪といいながら喉元を指し、倒れたアキラを見ればあのチョーカーが付いていない。
「見事に魔力を繋ぐ筋を切られておるな・・・・。止血後病院にて術をかける。急いで処置を。」
 キフィーの指示にレオの父、キンファーレが返事し慌しく他の医者と共に止血やら何やらを始めた。
アキラの首にチョーカーが取り付けられ、髪が純白に戻り伸びていた爪が元に戻る。
 担架に乗せられ、揺れたわずかな振動にアキラは激しく咳き込んだ。
その様子を見ていたキフィーは強面の顔をさらに引き締め、眉間にしわを寄せる。
「・・・あの馬鹿が・・・暴走しかけおったな。グラントとかいうのが出てこんかったか?」
「えぇっと・・あの鍛冶屋がどうのって言っていた人・・・ですか?」
 ブラッドが答えると納得したように頷き、念のためとアキラとは違うヘリで病院へと向かった。