第2章「過去の傷痕」一節・・記憶球


 あの事件の後、ロロイが担当する事になり3人の前からアキラは姿を消した。
ロロイは出した課題の出来を見ると次の指示を待つ3人にため息をつく。
「つっても基礎終わってんだし・・・ほとんどやることないなぁ・・。」
「ジェンクさん・・あの・・アキラさんって・・・。」
 これまでの訓練の復習を終えた3人にロロイは腕を組んでぼやく。
どういうわけか訓練生の必要課題はすべて終わっていた。まるで今回の事を予測していたかのようだ。
 
 レオはここ数日間ずっと気になっていた事を聞いてみる。アキラは一体何者なのか。
だが仮にもエージェントの上官であるエリートエージェント・・しかもナンバー持ち。
聞いてしまった後から無理か、と諦めかけようとした時ロロイはなんでもないように語りだした。
「あぁ、あいつ?今年で236歳の本名アキラ=ノウライ=ヴァルビス。ちなみに確か人間界の日本で言うと干支は・・・馬だったかな?無愛想だし、無表情だし・・何考えてんだかわかりゃ〜しない俺と親友の義父だよ。」
 あっけらかんに答えるロロイに3人驚く。
だがそれによりアキラという人物の一辺がわかった。本名も年齢もそしてなにより・・・
「義父って・・。」
「まぁ正しくは親友のだけどな・・・。けど俺はあいつに命を助けてもらった。だから・・・俺にとっても義父も同然だよ。不器用でどこまでもお人好しのバカ親父だけどな。」
 
 あはは〜と笑うロロイの肩にコウモリが止まる。
振り向いたロロイにコウモリは人のように肩をすくめて見せた。
「ロロイ、お前・・あいつにばれたらスペアキー没収されんじゃねぇの?」
 間違いなくコウモリから聞こえる声。それは以前レイルッドと会話しあの戦いのさなかでも聞えていた・・。
「あ、グラント?あ〜もう呼んでんだ。んであのバカ親父の様子は?」
「あぁ。これかしてやるから使えって。あとあいつはバカだけじゃなくチビも付け足しとけよ。」
 グラントと呼ばれた藍色のコウモリは赤い球を渡すと小さな音と共に消える。
魔族も天族もそれぞれ変身呪文という呪文があり会得すれば魔族はコウモリに。
天族は鳥になることができる。つまりグラントという青年は魔族と言うことだ。
「了解。んじゃあ天王様が呼んでいるらしいから森の外に移動してからこれでラファミンまで戻って・・・あ、早いけど訓練はこれにておしまい。お疲れ様。」
 突然の訓練終了に目が点になる3人。
「え!?まだ半分も・・。」
「あいつの訓練、大体10日間くらいあれば終わるんだこれが。あとは応用とか復習。
大体本格的な模擬訓練とか他の教官と違ってやんないし。あいつ戦いとか全部嫌いだし・・・人が傷つくのはもう見たくないんだとさ。でも無茶ばっかするから見ている側としてはもっと自分を気遣って欲しいもんだよな。」
苦笑いをうかべロロイはどこか寂しげに説明する。