森の外れまで来るとロロイはあの赤い球を地面に投げつけた。
すると目の前に赤いスポーツカーが現れた。
天界にある車はすべてタイヤがなく動力は魔力を風力に変換し走る。
そのためエアカーと呼ばれていた。
見たこともないモデルにジャックは興味津々で眺めた。その隣で一際目を輝かせる・・ブラッド。
「これって・・まさか・・・・R31−0078型のゼクラじゃないですか!
かなりスピードが出てその上安定性抜群。1855年にコストの関係で今となっては幻となったゼクラシリーズの最高とも言われたエアカーですね。
当時としてはなかなかの値で人気はあるもののあまり売れなかったし、与える魔力も相当なものだった…。」
 型番を言い当てながら性能についても語りだすブラッドにジャックもレオも驚く。
普段そういった話をしないためか、まさかブラッドがエアカーマニアだとは知らなかったのだ。
 
ロロイのものかと問おうとし、何か引っかかりを覚える。
「さっき・・これグラントとか言う人から受け取っていましたけど・・・。」
「あぁ。うん。アキラのものだ。ご丁寧に魔力は満タンだし、予備の魔力の代わりもちゃんとあるし。乗れよ。」
 やはりそうかと思い、ロロイの言われるままに乗るとエアカーは宙に浮く。
スピードを出して進むエアカーの乗り心地は最高だ。
魔力の予備と言っていたのは数本の髪で、ロロイに言わせればちょっとした距離なら空の状態でも一本の髪があれば十分魔力が補えるという。
現に髪は魔力かと思われる光を放っていた。
 
 
 荒い運転も徐々に収まり、天界の大都市ラファミンへとたどり着き、見る見るうちに天界で2番目に高い建物、ラファミン宮殿が近づいてきた。
宮殿という名ではあるものの実際は洋風な城の形をしている。
その隣には50階建ての幹部が住む高級マンションと天界の役所、ユグドラシルがそびえ立つ。
「それじゃあ俺が案内できるのはここまでだ。あとは天王様に聞いてくれ。」
 城の内部、ほかと違い装飾が細かな扉の前でロロイがそう言い出し3人の背を押し出す。
「え!?」
「アキラさんが呼んでいるんじゃないんですか?」
 てっきりアキラが呼んでいるのかと思っていたレオと天王と聞いて驚く2人がロロイの腕をつかみ、慌てたように引き止める。
 
「あぁ、正確にはそうなるけど…あいつどうせいないし。今頃病院抜け出して出かけてるだろうし。ま、とりあえず天王様が用件話してくれるから…行って来い。」
 3人の肩を掴み笑顔で扉へと押し出す。
勢いよく押されたために3人は思いっきりぶつかりそのまま扉を押し開け中へと転がり込んでしまった。
「また乱暴な…。よく来たの、レオ君、ブラッド君、ジャック君。まっておったよ。」
 赤くなった鼻をさすり、顔を上げれば机を挟んだ先に天王ゴークが腰を下ろしていた。
慌てて起き上がり礼をする。
「そう硬くならずにいいんじゃよ。遠慮はせず、そこにかけなさい。」
 やさしく促され、余計に固まる3人はギクシャクと進められた席へと座った。