二節・・歴史

            龍暦5174年、西暦1997年
 気になったブラッドは祖父に聞いてみたり、父親に聞いてみたが
どれもはぐらかされてしまい、全くわからない状態で終わっていた。

あれから5年がたった。
3人は20歳になったが、この天界と魔界のある世界では20歳でも子供は子供だ。
身体的には15〜18くらいが妥当の地球では準大人に差し掛かっている状態。
法律では100歳になるまで成人とは認められない。まだまだ学ぶ事が多いため、学生である。そして今、3人は巨大なホールで講義を受けに集まっていた。
題目は《天魔界全面戦争》
そう。
あの悪夢のような長い戦争について、事前に配られたパンフレットによると、伝説とまで言われるあの終止符を打った人物が来るらしい。
「そういえば・・・レオ、ジャック。今日発表だよな。あの〜・・・ほら、あれだよ。あれ・・。」
「あぁ、あの実習模擬訓練の担当が決まるのかが?」
 そうそれ!、と手を鳴らすブラッドを尻目に2人は誰が来るかを考えていた。
「って俺たち考えても全然しらねぇからなぁ・・・。」
「クリフィ=グイフォードさんとかは?」
「無理無理。大体あの人有名だけど実戦不向きそうなイメージがあるから却下。」
 テレビにも出ているエリートエージェントの整ってはいるがきざったらしい顔を思い浮かべ、ジャックはすぐさま否定する。ファン一同が聞いたら・・・恐ろしい事になりそうだが。
「まぁ開けてびっくりってことで。そういえば最近出たゲームでさ、あれ買った?」
「ブラッド・・・歳取ったら物忘れ早くなるよ?発売日に買ったけど・・・真のエンディングが見られないんだよね・・・。ジャックは?」
「大病院の一人息子が言うと妙に説得力あるきがするな・・・。俺はなんかしらねぇけど発売日前日に届いた。しかもレアな初回限定版!」
 羨ましがる2人の声がし、始まるまでの時間始終ゲームの話に花を咲かせる。
 
 
開幕のブザーが鳴り、舞台上に女性が上がる。
「ただ今より天魔界全面戦争についての講演を行います。体験者の声や当時の映像などを主に進行していきますので、途中席を立たないようお願いいたします。また私語も慎んでください。それでは。」
 女性が手元のスイッチを入れると映像がスクリーンに映される。
ただの映像ではない。
スクリーンに映されているが立体映像だ。
その証拠にただの映像では出ないような臨場感がある。
高度な呪文が立て続けざまに唱えられ、激突する力。そして交わる武器と武器。
「それでは初めに、当時救護班として現場に居た現ミラス総合病院院長をつとめます キフィー=ミラスさんお願いいたします。」
 その声に舞台へと上がる姿にレオが驚く。
「おじいちゃん!?」
「あ、院長さんだ。あの人多忙だよなぁ・・・。レオ、聞いてなかったのか?」
 ジャックの言葉にレオは首を縦に振る。
彼の反応を見れば一目瞭然だが聞かされていなかったらしい。
長身細身で濃い黄色の短髪はやや逆立っており、厳格そうな顔。
天界では珍しい和服を着、古風な雰囲気が漂う。
キセルを加えている姿はまさに古風な極道。
「わしがキフィーだ。まぁ病院に来たものならば今更紹介はいらんな。当時わしは前線救護をしておったが・・惨い有様だ。
地獄絵図・・・そういえば何となくならわかるだろう。運ばれてくるのは皆一人では動けぬような姿のものばかり。
甦生呪文が何度も使えるはずも無く、飛び交う呪文を掻い潜り・・・と言っても魔族側からの攻撃は流れ呪文以外なかったがな。死と隣り合わせの状況で何度死を覚悟した事か。」
 キフィーの言葉に合わせるようにして映像が当時の現場を写す。
回復呪文を唱えられるものがあちらこちらで唱えるが追いついていない。
中には飛んできた呪文を弾くため防御結界を張り、他の呪文が唱えられなくなったものも居る。キフィーの話はその後すぐに終わった。
 
1人・2人と体験者が話していく。
龍暦4959年12月、人間界の西暦にして252〜1782年12月13日無理矢理と言った形で終止符を打つ。
当時20歳の魔王ダモスと天王王女マリアの子ども。その子どもに対しての言葉もあった。