三節・・訓練

   訓練開始当日
3人は時間通りに森へと集まった。だが、肝心のアキラがいない。
時間にはまだ余裕があり持ち物の確認を行なった。
持ち物といっても一般的なお泊りセットに着替え2着。
そしてサバイバルナイフ。
「・・・どうみてもなんか・・泊まりに行くだけにしか見えないよね。」
「確かに・・・。武器の持ち込み不可って言われているし・・・。」
「つうか訓練だよな。」
 3人はため息をつく。幾ら平和とはいえ訓練は訓練。なのにのどかな雰囲気が流れてしまう。
「そういえば皆サバイバルナイフ・・・なんか古いね。」
 レオが取り出したサバイバルナイフは父から渡されたもの。
「あぁおれは親父から。なんかもらい物らしくて使い勝手がいいから持ってけって。」
「俺は・・・準備している時に鳩便で送られてきた。柄にはなんかかいてあるけど雁=月光かな?」
「名前で漢字があるなんて・・人間界の人のものかな?鳥の名前だし・・・他にもガンとかゲンって読めるらしいよ。」
「へぇ〜・・・。やっぱレオは頭いいな・・・。かり以外に読めねぇ・・・。」
 結局ナイフの持ち主は不明のまま、集合時間1分前となった。
 
 
依然アキラは現れない。
「時間ぴったしとか・・そういう事かなぁ・・。」
「いや姿ぐらい見えててもいいだろ。言いだした本人が遅刻か?チビだから足遅いのかもな。」
 笑うジャックにレオもブラッドも引きつったような笑いをしジャックの背後を凝視した。
それに気がつかないほどジャックは鈍く無い。
嫌な冷や汗が背筋を流れ振り向くことができない。
「そうか。チビか。ではそのチビはその短い足を木にのせ、必死になって1時間ほど前からお前達を見ていたわけだな。・・・・チビで悪かったな!!!!」
 木から逆さ吊りになっていたアキラは振り子のように体を揺らし、ジャックの後頭部に頭突きをする。
予想以上に大きな音が響き、ジャックはその場にうずくまった。
悲鳴を上げていないところがジャックらしいともとれるが、痛みのあまり声が出ないのかも知れない。
 アキラは一回転し地面に降り立つと、悶絶しているジャックには日本刀を。
ブラッドには弓を。レオにはブーメランをそれぞれ渡した。
今日は黒いマントを手に持ち、白いローブを着ていた。袖は長く、足元は隠れて見えない。
 いつもマントでわからない輪郭は全体的に細い。
相変わらず長い髪を項辺りで結わき、首には依然落としたネックレスと勾玉のついた黒いチョーカーをしていた。
「これから訓練を開始する。その前に課題を提出してもらおう。・・・ジャック。いつまで悶絶しているんだ。さっさと起きろ。」
 よろよろと起き上がったジャック含めた3人から課題を受け取ると、ざっと目を通す。
特に不備は無かったらしくアキラは何も言わずに紙をしまった。
「訓練を始める前に最後の課題を出す。正解はない。ただ自分の思う答えで言い。」
 アキラの言葉に3んには身構える。
まだあったのかと思いたくなるが、先ほどの対応を見て反論は出来ない。