『【アキ!?見ないで・・・見ないで!!早く・・早く核を壊してよ  ちゃん!!!!】』
「核壊したらレイナさんしんじゃうよ!!」
 赤い涙を流す魔獣は少女に懇願する。
涙を流し、必死に呪文を唱えようとする少女であったが、できないと叫び、涙を流しながら頭を振る。
その傍らでアキラが剣を抜いた。
『一生忘れない・・・。レイナ・・・俺には元々そんな感情なかったから・・・羨ましかったよ・・。
レイナのおかげで・・・少しだけ俺にもわかった・・・。絶対に忘れない・・・。』
 何度か言葉を交わした後、アキラは少女の制止を振り切り、剣を構えレイナに飛び掛った。
正確に核へ一衝き入れ、レイナを苦しませることなく破壊する。破壊されると同時に彼女は徐々に縮まり、元の″人″へと戻った。
 だが、既に虫の息同然の彼女に生きる力は残されてはいなかった。
 
『あぁ…私…もどったの?』
『…うん。』
『馬鹿みたい…私…どうして…。』
『レイナ…すまない…。』
『何でアキがあやまるの?』
『レイナを守ると決めたのに…守れなかった…。』
 目を伏せるアキラにレイナは微笑む。
雑音と共に目の前の映像も揺らぐ。
 
 
「アキラ様はご自分でレイナ様の核を破壊したこと、守れなかったことで心に消えない傷を負われました。そのためか記憶の球にも影響が出てしまいました。」
「本当に・・・他の方法はなかったんですか!?」
 恋人であるレイナを…アキラは自ら核を打つことで死なせてしまった。
本当にこれ以外に方法はなかったのだろうか…ブラッドはリチャードを見る。
 
「そうだ!さっき魔人は2人って…もう1人の人なら知っていたんじゃないのか!?」
「ございません…。レイナ様でない魔人の方がおっしゃるにはレイナ様は人工的に作られた存在でございましたため、魔人から魔獣になってしまってはもう二度と戻らないと…。人の心のまま死なせてあげるのが一番いい方法だとおっしゃっておりました。」
 一類の希望をリチャードに問うがリチャードはきっぱりと否定した。
 
『ねぇ、アキ…お願い・・・があるの・・』
 雨が降り始める。それは…天もないているかのような悲しい雨であった…。
『わたしの力・・・アキラが持ってて・・。・・この力…誰か他の人に継承されて…悪用されたら嫌だから…。だからアキ。』
 そっとアキラの頬を手で包み込むと唇を合わせる。レイナの体から光が溢れ、アキラに消えていった。
「力って…。」
 天界には癒しの力という力があり、それは万物を癒す魔法ではないまた別の力。
それは今現在アキラは継承しているとリチャードはいったが、今アキラに継承された別の力は・・・。
「魔界には破壊の力と呼ばれる力がございます。癒しの力とは違い万物を破壊する絶対的な力でございます。」
 破壊と癒し。正反対の性質を持つ力をアキラは受け継いだのだ。
力を渡したレイナは…微笑みながら息を引き取った。
 
 
「アキラ様はこの頃を境に体の成長がとても遅くなりました。」
「成長が遅くなる?」
 いくら心の傷を負っていても成長を止めることはできない。
一体どういうことなのかと3人がリチャードを見るがいまだ解明されていないという。
考えられるのは過剰な力が原因ではといわれているらしい。