そして再び闇から映像が浮かび上がる…。
それは3人も一度は見たことのある歴史の写真とほとんど変わらない戦争の風景。
 
「まさか…12月の…。」
「そうでございますマルス様。この日、ダモス様は平和協定を結ぶため…戦争に終止符を打つため降伏の意を表そうとしておいででございました。」
「でも戦争が嫌ならもっと早くに終わらせていればよかったじゃないですか!!」
 レオは何故今になってようやく動き出したのか分らず叫ぶように言う。
 
「魔界の人々は邪神様の人質でございました。私にも詳しい邪神様とダモス様の間で決められた制約はわかりません。しかし、ダモス様は被害が最小限となるようさまざまなお働きをしておりました。
そしてその制約はアキラ様が20歳になるまででございました。降伏にも準備をしなければなりません。そしてそれが現実となるとき…それは起こりました。」
 ダモスが来たときには既に戦いは始まっていた。
ダモス自身、魔界側から来たにもかかわらず若干怪我を負っていた。
戦争賛成派に足止めをされてしまったようだ。
両者を引き離すためダモスは炎の壁を作り出し境を作る。
 
 だが、ダモスが降伏するより先に不穏な動きが現れた。
『天族ども!降伏しなければ貴様らの姫を殺す。』
 ヴァルキたちが前に進み出る。
マリアは結界に閉じ込められ、運ばれていた。
天界側がやむえず武器を収める。だがマリアの背後から天族へ向かい矢を構えた。
まだ遠いいためか相手は気がついていない。アキラだけが気がついてしまった。
 
 
『母上!!罠です!!!』
 飛び出たアキラに天界側はとっさに魔法力の弾…魔弾を放つ。
そしてヴァルキがアキラに向け嫌な光を帯びた魔弾を放った。
『アキラ!来ては駄目!!』
 反応が遅れたアキラをマリアが抱きしめる。眩い光が消えたときにはマリアは力なく地に伏していた。
『母…上?』
 何が起きたのかわからないという表情で座り込む。
 
 
 ふと、遠くにいるヴァルキの声が風に乗ってか聞こえてきた。
『人形に不必要なものであろう…。さぁ、その女ごと天族を焼き殺せ!』
『人形…なんかじゃない…。』
『貴様がマリアを殺したのだ。』
『違う…こんなはずじゃなかった。俺は…』
『いまさら何を言う。…あの出来損ない魔人の小娘同様、その女も用済みだろうが。』
『レイナは出来損ないなんかじゃない!!何が用済みだ…。』
『自分で2人とも殺したのだろうが……   は一人で十分…なぁ。』
 ヴァルキがくつくつと笑う。
残忍な声にいつしか若い女性の声も混ざり…。
 それをきいた瞬間、アキラの瞳は赤く染まり、髪がゆっくりと持ち上がり、髪留めが引きちぎれる。
 急速に伸びた髪の下から漆黒の翼が姿を表し、眩い光で翼は純白へと姿を変えた。
力はアキラの絶叫と共に広がり地面ごとすべてを消滅させていく。
 
魔力の暴走。
 
それが終戦の真実であった。