三節・・子


「アキラ様はこれ以後、天界におります。マリア様は亡くなったと考えられておりましたが魂ごと別の結界に覆われ、眠っていたことが分りました。そしてダモス様もまた、アキラ様の魔力が暴走なされた際時空の狭間にはいられ、眠っておいででございます。」
 何時目覚めるか分らない封印状態の2人。
歴史で聞かされていたものとは違う真実に3人はただ驚いていた。
暴走した破壊の力とすべてを戻そうとした癒しの力。
 この世で一番強いといわれる人物はこの世で一番強力な魔力を持つ。
だがそれは同時に諸刃の刃であり現在は己をただ苦しめるものとなっている。
そしてアキラが以前言っていた両親を一言で説明するのは難しいというのは…おそらく何がおき、どうしてなったのかわからないからなのかもしれない。
 
 
 
「本来ならば記憶の玉はここで終わりなのですが、今回だけマルス様にと記憶が追加されております。」
「俺に!?」
 突然自分の名前が出たことにジャックはどきりとした。アキラと自分の接点…祖父以外にあったのだろうか。
 
 
 闇から浮かび上がったのは秋空色の髪をした四方に髪が立っている青年。
『きいてくれよ!馬鹿親父。』
『またハルの話だろ…。今日で何度目だと思っている。頼むから休日ぐらい休ませてくれ。』
 何処かの部屋でくつろいでいるアキラに青年は目を輝かせながら語り始める。
ため息をつくアキラだが別に本気で嫌がっている風ではなく、時たま相槌を打つ。
 
『ガン、しばらくはここに住むんだろうが早いところ一軒家でも建てたほうがいいんじゃないのか?』
 呆れたように言うとガンと呼ばれた青年はいやだと笑いながら拒否をする。
『俺がハルと結婚して、ガキ2・3人産まれて大きくなるまでいるつもりだけど?教育面的にあんまよくないベビーシッターいるし。』
 
「この人が…父さん?」
 笑うガンをみていたジャックは自分に髪の色以外瓜二つの青年を凝視する。
ハルという女性が自分の母なのだろうかと、初めて自分の家族の名を聞いたジャックは呆然としていた。
「そうでございます。ガン=ノウライ=マルス様…あなた様のお父様でございます。」
 リチャードの言葉に3人は耳を疑う。ノウライ…それはアキラの名のはず。
アキラを親父というガン。
「もしかして!!雁=月光ってジャックのお父さんのこと!?ほら、ジャックナイフに書いてあった。」
「そういうことだったんだ…。」
 はっとレオはアキラが言うノウライを月光だという言葉を思い出し、ジャックのナイフに書かれた名前が誰かを言う。
ジャックも思い出したようにポケットからナイフを取り出し、再び刻まれた名前を見た。
古いと思っていたのは父親が使っていたナイフだからだったのだ。