楽しげな2人の姿が消え、赤ん坊を抱いた夫婦とアキラが映し出される。
『あ〜あ、まったくアキラの過保護にも呆れるぜ。次の魔獣討伐からは事務仕事か〜。』
『せめてジャックが大きくなるまでおとなしくしていろ。ハル、危なくなったらガンを置いてでも帰って来い。こいつは多少ほうっておいても死ぬような鍛え方はしていない。』
『そうね、もしものときはそうするわ。』
 くすくすと笑う薄緑色のまっすぐに伸びた髪を背中でゆるく結ぶ女性…ハルはジャックを抱えなおす。赤ん坊はぐっすりと眠っていた。
 
『ひっでぇ!ハルゥ〜そりゃねぇよ〜。』
『アキラの息子ならだいじょうぶでしょ〜。ねぇ、ジャック。』
 
 
「この人が・・・俺の母さん…。」
「やさしそうなお母さんだな。」
 幸せそうな家族にジャックは鼻の奥が熱くなる。
 
 ピピピ、と機械音が聞こえガンは小さなメッセージモニター…メモニを取り出しハルを呼ぶ。
『魔獣は3体か…大丈夫か?ガン。弱小の魔獣とはいえ油断はするな。』
『だ〜いじょうぶ大丈夫。万が一危なくなったらすぐ呼ぶからさ。息子がいるんだ。どっかのバカ親父と違って無茶しないで帰ってくるさ。』
『それじゃあその無茶ばっかりしているお義父さん、孫の面倒見ていてね。』
『ハルまで人を爺扱い…。さっさと行ってこい。夕食ぐらい用意しておいてやる。』
 楽しみにしてるよと、笑いながらガンとハルは出て行った。
託された赤ん坊…ジャックを抱えアキラは座る。
 
 再び短縮されているのか気がつけば時計は2時間先を指していた。ジャックはベビーベットで寝ている。
アキラは時計を見るなり突然めまいを起こしたようにふらつき、表情を変え外へと窓から飛び出していった。
 景色が飛ぶように過ぎ去り、アキラはかろうじて息のある魔獣を一瞬にして消し去り、逃げようとする魔族を捕まえ怒りのままに伸ばした爪を突き刺す。
『ガン、ハル!どこだ…どこにいる!!』
 いつの間にか“首輪”をはずしたアキラは必死になって2人の姿を探す。
ハルは岩の傍で倒れていた。そして少し離れた先にガンが倒れている。
うめく声が聞こえ、アキラはガンのそばへと駆け寄った。
『ハル・・は?』
『…何があった…ガン。』
『わかんねぇ…でもハルが逃げる途中化け猫のしっぽにふきとばされたのは見てたから…。』
 血を流すガンをアキラは手早く手当てしていく。だが、そのガンすらも息は浅く目にみえて弱っていくのがわかる。