4節・・祖父



 
 
「ナイトヒルのギンクって…あの反戦争を戦中ずっといっていた人?」
「多分…そうかな。元々凄い強い人らしいけどずっとこっちで待機して魔生物を倒すことしかしてなかったって。戦争には賛成してなかったらしいよ。」
 タクシーに乗ったブラッドはレオに確認を取る。
3人はどうしたものかと考え、とりあえず会うだけあってみようとナイトヒルに向かっていた。
 
「なぁ…俺アキラにどう接すればいいんだろう…。」
 一度にさまざまなことを知ったジャックは混乱しながら2人に問う。
名付け親であり父の育ての親…祖父同然の存在。
2人もどう答えたらいいのかわからず、車内には沈黙が流れた。
 
   
 空が暗くなり星が見え始めた頃、天界のからもっとも魔界に近いといわれる岬へと到着した。
こんな時間に大丈夫だろうかと大きな屋敷の戸を叩く。
だがギンクはすぐには出てこず、奥から勝手に入ってきてくれという言葉だけが聞こえる。
 3人は顔を見合わせ、門をくぐった。中は天界には珍しい純和風屋敷。
まるで旅館のような屋敷に3人は恐る恐る入っていった。
 
 
「ようこそ、天界の辺境の地…ナイトヒルへ。すまんが手を貸してくれないか?見てのとおり両腕がふさがっていてな。」
 玄関の引き戸を開けると濃い紫色の短髪を生やした初老の厳格そうな男性が3人を出迎えた。その腕にはぐったりとした様子のアキラが抱えられている。
 
「あの襲撃以来ずっと寝ずに体を鍛えていたんで今日無理やり薬と共に夕食を食べさせ、ついさっき倒れるようにして眠ったんだが…座敷に敷物敷くのを忘れてた。」
「それじゃあ…今アキラさん眠っているんですか?」
 ギンクに促され靴を脱ぎ縁側を歩いている途中何があったのかを説明される。
聞けばあの襲撃以来、ほんの2・3日は入院していたんだが退院後すぐここに来たという。
 そして日中はギンクが指導し、夜間は一人で体を動かし続け食事もとらなかったそうだ。
 
 とうとう今日の夕食時に見かねたギンクが睡眠薬を入れた夕食を無理やり食べさせ、その後もしばらくは体を動かしていたが事切れるように倒れ、今に至ると。
「キフィーとウィル、それにロロイが共同開発したアキラ専用の睡眠薬だからな…。まぁ明日の昼までには目を覚ますだろ。」
 いっそう青白さを増した顔は陶器で作られた人形のようで、わずかな呼吸音がなければ生きているとは信じられない。ギンクに言われ敷いた布団に寝かせると3人は居間へと通された。
「いろいろ話もあっただろうが…わるいな。あいつには休息が必要だ。」
 盆を持ってきたギンクは正座をする3人に茶を出す。
「いえ…こちらこそ突然来てすみません。」
「一応はアキラが来るとかなんとかいっていたんだが…なにせあいつの先読みの力は不定期で不明確、おまけにあいつの体調をさらに悪化させるという、まさに悪いことづくしの力だ。あてにならないから使うなとはいってはいるんだが…無意識だからなぁ。」
 まるで意味がないとギンクは愚痴をこぼすように言うと足を崩したブラッドに茶を再び注ぐ。
「まぁ積もる話しもあるだろう。今日は遅い。部屋を貸すからそこで寝るといだろう。」