見上げても海へそり出た崖の上はよく見えず、岩場を進む。
やや涼しくなったこの季節、3人は足のみを海にいれ何処にいるのだろうかと首をめぐらせた。
「本当にいるのかなぁ…。」
 
 ブラッドが振り向きざまに立ち上がると何かにぶつかり、転びかけてしまった。
だが転ぶより先にそのぶつかった何か…人物に腕をつかまれ、支えられる。
「って〜。」
「岩場は不安定だ。足元をよく見たほうがいい。」
 背の高い着物姿の男が立っている。顔は布に隠れて見えない。だが、その声に言われた本人はおろか、立ち上がりかけた2人も思わずかたまる。
男は気がついたかのように布を取り去った。現れた顔は3人が予想していた人物と同じで、どういうことなのかと口を開いたままポカンと見つめる。
 
 目は碧いままで髪は漆黒。だが3人の中で最も背の高いブラッドよりも背が高い。見かけ年齢は二十前後ぐらいだろう。
「何時までも海に入っているわけないだろ。どうした?珍しいものでも見たような顔をして。」
「だっだってその姿!!」
 いつも年上だとわかっていても見下ろしていた分違和感が拭えない。
レオの声に気がついたのかアキラは”首輪”をはめ封、と勾玉に指を押し当てる。すると静電気がはじけるような音がし、見慣れた背の低いアキラがその場に立っていた。
「もしも俺が通常通り成長していたらと計算した結果だ。ひとしきり体を動かしたらこの姿で手伝えといわれていたからな。あのアルバムにも写っていただろう。」
 通常通りの成長といわれ、すぐに実年齢が出てこなかったが200歳超えていることを思い出し、成長していたらこんなにも違うものかと3人は感心にも似たため息をついた。記憶の球でみたアキラの父、ダモスに本当に瓜二つだ。
 先ほどのアルバムにいた黒髪の男性はアキラであり、ガンを育てていたときは頻繁にこの姿になっていたと言う。
 ふと、唐突にアキラがあの終戦の人だということを思い出し、戸惑う。そんな3人の心情に気がついたのか、アキラは踵を返し崖上へと続く道に足を向けた。
「戻るなら戻「うわっあぁっと!!」」
 歩き出したアキラに慌ててレオが一歩足を踏み出したが、足場の悪い岩場。濡れた岩に足を滑らせたレオは振り向くアキラに向かって倒れこんでしまった。
とっさのことでレオを受け止めたアキラだったがそのまま倒れ鈍い音が響く。幸い岩場でなく、砂場であったがそれでも衝撃が大きかったのだろう。
 
 気を失ってしまっていた。
「どっどっどっどっどどうしよう!!死んじゃったの!?えぇっとお医者さん呼ばなきゃ!!」
「おっおちつけよレオ!医者ってお前んちだろ!!死んでないから!多分。」
「目をまわしたときはどうすれば・・そうだ水!水顔にかければおきるかも!!」
 パニックになるレオにジャックとブラッドも混乱する。焦ったあまりどうすべきか、応急時の対処方法はちゃんと習っていたはずだが、本当に緊急時には思い出せなかったのだ。