応急処置としては間違っているだろうが、パニックに陥った3人は無理に納得してしまった。おまけに何を間違えたのか、ジャックはアキラを海へと投げ入れる。
「ジャック!?何してるの!?」
「え!?あれ???あーーー!!!」
 自分で何をしたのかわかっていなかったのか、レオに指摘されジャックはどうしようと叫ぶ。そんな心配をよそに投げ入れたれた本人が立ち上がった。その姿に幽霊でも見たかのように驚き、声を引きつらせる。
 
 
「まったく…もうちっと落ち着いて行動しても大丈夫だぜ?どうせこいつ頑丈でそう簡単に死なないんだし。」
 海から出てきたのはアキラではなく、グラントであった。“首輪”を付けたままではあるが、漆黒とはどこか違くみえる塗れ羽色の髪に両頬には刺青が浮き上がっている。
「よう、まともに面と向かって話すのは初めてだよな。まぁ改めてグラント=メアリールーン=フランカウ。フランカウ家の最初であり本家最後の生き残り。」
 ローブよりこっちのほうが気が楽だと、指を鳴らすと紺色の着物へと変化した。
あの戦いの中で見た印象のほうが強く、知らずの内に身を強張らせてしまう。
「あ〜やっぱあっちの印象のほうが強いからなぁー。まぁそんなに硬くならなくたって別にいいよ?ガンなんて知った途端あいつの愚痴始めたぐらいだし…。ま、気にすんなって。」
「アキラさんの剣作ったの…グラントさんですよね?」
 笑うグラントにほっとしたレオは以前アキラが言っていた魔剣の製作者だとグラントのことを言っていたことを思い出し、確認すればあいまいに頷く。
「う〜〜ん…まぁそうっちゃそうだけど、違うっちゃ違うかな?俺はディール神の牙からあれを見つけて、それを使えるまでに修復しただけ。でもまぁなんか感謝されてたし…あ、使えるように精製し直したわけだから一応製作者かな?」
 う〜んと考えるグラントだがわかんねぇと言うとすぐさま考えるのをやめた。
一応アキラの体が元になっているはずだが、輪郭以外一致するところはない。
魂が入れ替わったところで体まで変わるはずはないのだ。
それでもここまで変化しているということはアキラの体と同調しているのかそれとも別の要因があるのか…。
 
 アキラが目を覚ましたと3人に別れを告げ不機嫌そうな様子のアキラへと換わってしまった。髪が元の純白になり、着物もローブへと戻る。
藍色の瞳から碧い瞳へと戻るアキラだが睨むようにして3人を見つめていた。
「グラントがでて何か話したようだが…まぁいい。それより、一体何を勉強捨てきたんだお前達は。得にレオ、気絶を回復する呪文は初歩的なものだ。あとを継ぐ気ならばもっと勉強しろ。」
 やはり不機嫌なのか、いつも以上に刺々しい言い方に2人はため息をつき反省するにとどまった。
 
 だが、刺々しいものの言い方から無縁に育ってきたレオにとってアキラの刺々しさはずいぶんと深く刺さってしまったらしい。
面倒なことになったというアキラのため息すらレオの涙腺を悪化させるには効果があったようだ。
 堪えているレオを宥めるのは長年の付き合いであるジャック達にすら難しい。軽い音がすると再び背の高い今度は純白の髪のままのアキラが現れ、小さい子をあやす様に頭を撫でる。
「ものの言い方が悪いのはすまなかったな。」
 言葉が硬いアキラがため息混じりに謝罪するとレオは何度か深呼吸し、気持ちを切り替える。
レオが落ち着くと元の身長へと戻った。