朝食をとった後、身支度を済ませた4人は門の外へと出る。
「アキラさんは…どうやって帰るんですか?」
 交通手段はない。タクシーを呼ぶか、歩くか飛ぶか・・・。
「いつもなら面倒だから走るが…さすがにきついだろ。今回はこれで帰る。」
 見覚えのある赤い球を投げると赤いスポーツカーが表れた。
「あ!!そうだ、ジェンクさんが送ってくれたR31−0078型のゼクラはアキラのもんだって言ってた!いくらしたんだよ。」
 再びこのエアカーに乗れるということでブラッドは目を輝かせる。
 
「そういう名前だったか。エアカーが欲しいと言ったら値段がどうとかで売れ残っていたこれなら売ってやると言われ、買ったんだが…。30年ぐらいローンとして給付金の3割を取られていたからかなりの額だったんだろう。」
 エリートエージェントの給料がいくらかは予測がつかないが、それの3割を30年間…。いくらなんでも高すぎるのではとブラッドは当時の値段を思い出す。
「…ぼったくられてるな絶対。それじゃあゼクラ2台くらい普通に買えるよ!なんでたしかめなかったわけ!?」
「何も不思議なことではなかったからな…。ガンを引き取ったとき、75歳でガンが9歳だった。エリートエージェントには150歳で昇進したからまだ100だった頃か。ならまだ新米だったな。食料は2倍から3倍が普通、その他に関しては10倍は当たり前。それが天界に来て、一人暮らしをはじめたときから50年ほど続いた習慣のようなものだ。さすがにガンが買い物に出たときは元の値段だったので、あいつがほとんど家計を握っていたな。」
 一天界の住人として暮らせるようになっても差別が続き、物価が通常の何倍にもなっていたという。四面楚歌な生活を強いられていたと当の本人は淡々と他人事のように言った。
 
「大体生活には困ってはいない。食事は最低2日日ごとに2食で事足りる。絶食は一ヶ月以上は持ちこたえられる上に、消費が少ない日用品を買う必要がない。」
 ただでさえ訓練中にリンゴ一つで3人は驚いたというのに、2日ごとに2食…つまり1日1食で足りるといわれ、驚愕する。絶対に体の構造がいかれているといわんばかりの表情にアキラは首をかしげる。彼の持つ常識というのが一体何処まで外れているのか…3人にとっては予測すらできない。
「じゃあ…俺の親父と暮らしていたときも・・・。」
「いや、そんなことをしたらあいつに何されるものか知れないので、少量なら毎食時に食べていた。」