「でもあのゲーム・・・真のエンディングってすごく悲しいって聞いたよ。」
「なんか隠しイベントを見ていくと出てくる邪神ユリシアを倒すんだよな。無理無理。あんなの倒せるはずねぇよ。」
「おれは親父に聞いたけど最後邪神と共に死ぬって。俺も2日間寝ずにがんばったらなんとか倒してみたけど・・・悲しいというか、何千年生きた主人公が呪いから解けてやっと死ねたみたいな感じである意味ハッピーエンドだと思うけど。」
 リビングでくつろぐ3人はずいぶん使われていなかったであろうゲーム機とテレビをつけ、エンディングの話を始める。だが、2人はまだ真のエンディングを見ておらず、ネタバレをしてしまったブラッドにジャックが蹴りを送る。 2人の八つ当たりはアキラがとめに入るまで続いた。
 
 食事中、話題に上がったのは家族のことだった。
「そういえば・・・アキラの親父ってどんな人だった?」
「父上か?政治面に関しては歴代魔王の中で一番支持率が高かったぐらいであり、最年少で王位についたこともあるな。そして・・・自分のみより家族や魔族を大切にする王だ。母上より5ほど確か年下だ。記憶玉の当時は137、あの人とは129歳違いだから案外歳は近い。」
 アキラは確かめるように数えると合っていたのか頷く。そもそも一般人に天王の年齢を知っている人はものすごく少ない。とりあえず300歳代だろうと軽く頭痛のする頭を抑える。
「それじゃあ・・・先代の魔王・・・祖父ってどんなんだったんだ?」
 祖父というのがどんなものなのか、ジャックには見当もつかない。
 つい先日までは祖父がいないとされてきたのだが、父親の育ての親…いわば義理の祖父を目の前に聞く。
「父上が20になる前に圧政に苦しむ人々に暗殺されたからあったことはないな。だが史上最悪の魔王だったと聞いている。その反面、20で王位についた父上は僅か数年で最も偉大な王と呼ばれるようになった。非情の王の息子が偉大な王。父上にとっては複雑なことだっただろう。」
 片付ける音が止まり、淡々と説明するアキラの返答に3人は思わず背を向けて作業を再開したアキラの背を見る。
 王の暗殺など、天界では歴史上一度たりともない。そもそも圧政の暴君は聞いたこともない。親子3代にわたり凄い経歴だと感心する。
 
 
「さらにその息子は戦争を止めた世界で最強の人…。」
 レオの言葉に再びアキラの手が止まる。気分を害したのかと、レオは慌てて訂正するがアキラは違うと、一言こぼす。
「俺は最強などではない。友も守れず、子も守れず、親ですら守れない…最低最悪のものだ。巻き込みたくないと願うほど、俺の周りは皆不幸になっていく。かの邪神と同じ、この世に負しかまかない存在だ。」
 淡々と他人事のように言うアキラだが、3人ですらわかるほど寂しさと悲しさと…傷ついた心の悲鳴が聞こえそうな口調であった。好きで孤独を生きているわけではなく、周りの環境でそうせざるをえなかった…そうなってしまったアキラの孤独。
 どうしても同世代に見えるアキラに3人は何かできることはないかと、考えた。