二節・・過去


 3人が目を開けると一面闇しかない場所であった。
それでもお互いの姿が見える…不思議な世界。
目の前にいるリチャードはまず事の成り行きからお話しましょうと咳払いをした。
 
 
「アキラ様のお父上様はご存知とは思いますが、
魔界龍歴4821年名君とされる、魔龍十二代目ダモス=トロヘス=ヴァルビス様でございます。龍と言いますのは龍神ディール神様の力と血を受け継いだという言い伝えにより、両王家に代々受け継がれております歴代の名前でございます。龍の血と申しましても今ではもう薄くなられてしまいましたが…その言い伝えも薄れておりましたところに…アキラ様は両王家に分かれておりました龍の血を強く受け継いだのでございます。
しかしアキラ様は生まれつきお体が弱く、魔界に来てからは周りに漂う微量の魔力にさえ体調を崩されておりました。そんな中、大きな力をお持ちであったアキラ様を…魔王直属機関から独立しておりました軍総督…ヴァルキ=ドールス様はお見過ごしなさいませんでした。」
 体調が悪いとメリッサも…本人ですら時間がないと認めていた…。それは元から長く戦いができないことを示していたのではと3人は考え付いた。
 
 
「あれ?でも…なんで軍が独立…。」
「はい、ミラス様。それは魔界では魔王家よりも神々のほうが地位は上となります。
ヴァルキ様には邪神様がご光臨なされておりました。邪神ですが魔界では関係ありません。
そのために軍の支配権のみヴァルキ様が直接指揮されることで魔界全体の当時には関わらないと言う制約をいたしました。そうでもしなければ…魔界は邪神様が政治を行っていたでしょう。それだけは避けなければなりませんでした。」
 天界では神の信仰というものがほとんどない…。
そのため3人はリチャードの答えに戸惑った。
邪神でも何故従わざるを得ないのか…邪神ならば従わなくてもいいのではと困惑する。
 
「神々のお力は…アキラ様以外では到底太刀打ちできないでしょう。
ヴァルキ様は当時5歳になったばかりのアキラ様を軍へ…。アキラ様はマリア様やダモス様にご負担をかけまいと幼いながらにいつも心を押さえ込んでおりました。
アキラ様は龍の子でございます。“先を見る力”を持っておいででございました…。」