「天族の髪は厄介だな。」
 
 移動中、タイヤのついたエアカーのようなもの…
車とアキラが言うがその車が通るたびに嫌な臭いがあたりに漂い3人はむせこんだ。
そこに女性の声がかかり目の前に現れた2人に目を見張る。
怪しまれないよう若い姿ではあるがその2人は…。
「あぁ、変身してお会いしてましたです。リザです。こちらは姉の。」
「リーズ=クレイシャン=ドールスだ。私の顔に何かついているのか?信号トリオ。」
 赤錆色の長い髪をしたリザが丁寧にお辞儀をし、同じ赤錆色の肩まである髪をアキラ同様無造作に結んだ女性…リーズがやや高い声で怪訝そうに3人を見た。
「だっだっだっだだって…」
「破こ…。」
 突然で震えるブラッドとレオは信じられないという目でリーズを見つめた。
ジャックにいたっては声も出ない。
「あぁ、あれか。なんだ記憶球で見せなかったのか?」
「あの時ではパニックが起きるだろうが。似てはいるが…リーは破黒ではない。」
 2人は今後について話し合い、その様子からはあの2度の戦闘の憎悪は感じられない。
 第一髪の長さも違う…伸びたという感じでもない。本当に破黒ではないのかと、おそるおそる肩の力を抜く。
 
 
「はぁ!?どこの口がそれ言えんの!?ばっかじゃない!?」
「その言葉、そっくりそのまま返す!馬鹿はどっちだ!!!」
 突然の怒鳴り声に飛び上がる3人は目の前の光景に冷や汗をかく。
背の低いアキラに対しリーズは屈んだ状態でアキラと額を突き合わせ、お互いに罵倒しあっていた。いつも静かな口調のアキラが声を張り上げ怒鳴る姿に意外な一面を見たと3人は揃って思う。
「いい加減にしてくださいです。まったく…姉さまは外見にも大人なのですから子供をあしらう気持ちでいればいいんです。」
「リザ!!お前までリーに毒されたのか!!レイナと共に俺の身長をフォローしていたお前が!!」
「はっ!リザは元々こんな性格だ。レイナと違って面白いからフォローしていたんだからな。
それに気がつかないなんて…龍も落ちぶれたな。大体このくそ生意気な子供がどこにいるって言うんだ。」
 まるで子供のけんかのようなやり取りにそういえば幼馴染だったなぁと思い返す。
喧嘩するほど何とやらとはよく言ったものだ。
それにしても怒鳴っていようが表情の変わらないアキラは、ある意味凄い顔だよなぁと3人は完全に輪から外れたところで成り行きを見守っていた。
「大体身長が伸びない理由は知っているだろうが!!」
 
「さぁ。それにしても姉さま、久しぶりに顔を合わせたせいですか…顔が真っ赤です。」
「えぇ!?べっべつにこれは怒鳴りすぎただけで…」
 リザに言われ顔を両手で触るリーズはあたふたと言い訳を考える。それをリザが笑い、怒ったリーズを今度はアキラがとめる。
精神年齢が成長していないんだろうかと3人はやや呆れた様子で見守っていた。
「遅れた原因は姉さまが姿など変じゃないかそれはもう念入りに…。」
「ばっばか!そうじゃなくて…なによこの馬鹿アキ!!」
「化粧していたのか?」
 顔を赤くするリーズはアキラの言葉に別の意味で顔を赤く染め、頭をはたく。
「今のはアキラさんが悪いと思うよ…。」
「俺もそう思う…。」
 傍観者を決め込んでいたレオとジャックが口を挟むとアキラは頭をさすりながら首をかしげる。