「茶番はとにかく、あの人間をどうする気だ?」
 3人に呆れられ、ようやく静まった2人はやや気まずそうに本題へと入る。
「邪神を完全に消すつもりならばあの力は一度戻し、それから消したほうが賢明だと思う。
それでこちらに来たのだから私としてはそうしたい。だがそちら側は渡さないよう、彼女を死なせないようにときたのだろ?」
 そうだろう、と突然3人に振られ何度も頷く。
どうみても破黒そのままの外見と、アキラの幼馴染という歳の差に怖気づいてしまう。
「やっかいなことになっているが、私たちは私たちのほうでやらせてもらう。人間界で交戦は論外だ。私もしない代わりにそちらからも一切手を出さない。」
「当たり前だ。もう二度目はない。奴の残した最後のチャンスだ。それを見逃すわけには行かない。」
 
 互いに威圧感を漂わせ契約だという。万が一破黒が現れ、アキラが戦うようなことがあれば人間界…地球がどうなるのか想像もつかない。
それを未然に防ぐため口頭だが“契約”を交わしたのだ。
そして合図せずまるで示し合わせたようにリーズとアキラ、そしてリザが手を合わせる。
 
 
「わかっている。出来るだけのことはしよう。我ら敬愛すべき神に誓って。」
「我らの尊き神に誓って我ココに助力の限りを尽くそう。」
「この永きにわたり続く戦いに終止符を。我らと共に我が神々よ、永久に。汝に祝福を。」
「奴に裁きの門を。」
「我が若き君主に幸と力を。」
「「「我ら此処に誓わん。己が信ずるもののために。愛しきものへ命捧げん。」」」
 アキラ達はジャックたちが見ている目の前で、歌うように言葉をつづり、手を離す。
「良く覚えていたな…。」
「忘れるものか。」
 笑うような声で言うアキラに、吐き捨てるようにリーズは固い表情のまま言った。
何か過去にあったのだろう、握りしめた拳が僅かに震える。
「我、汝を助けん時、汝を滅ぼさん。我、汝がためならば命捧げん。」
 最後に付け足すかのようにアキラは独り言のようにささやく。
それは悲しげに聞こえ、うっかりしていたら聞き逃していたほどの小さな声。
先ほどの祝詞の続きにしてはリーズとリザの反応が妙に強張ったものだということに3人は引っかかりを覚えその言葉が頭に深く刻みこまれたのだった。