アキラが戻ってきた時、3人はリーズから聞いた話に笑い転げていた。
戻ってきたアキラを観るなり一生懸命笑いをこらえる。
「何を話したんだ?」
「赤裸々な白龍の昔話。」
 表情の変化が乏しいアキラが僅かに目を見開き驚いたような顔をする。
いや、驚いたというよりも恥ずかしさで目を見開いただけかもしれない。
「アキは戦闘訓練しかしていなかったですので、いつも姉さまの悪戯にのらされてたです。」
「あれぐらいのこと、悪戯じゃあないだろ。本気で信じる奴が悪い。」
 3人の頭を軽くはたいたアキラは思い出し笑いをする2人を睨む。そこへ一人の少女が現れた。
 
 栗色の髪をした少女は6人を見つけかけてくる。
転校生として入ってきた高校だが、独特の雰囲気を持つアキラとリーズを無意識のうちに人間達は避けている。
そうなると必然的に二人のそばにいる4人にも、最初の頃好奇心を見せただけでこの少女のように近寄る子は少ない。
「やっとみつけたぁ。もうみんな帰っちゃったよ?帰らないの?」
「黒内さんこそ…。んじゃあ帰るか。」
 美樹はやはり遠縁に天族か魔族がいたのか、6人にどこか懐かしい気がするとよく一緒に帰宅をしていた。その道中、遠くで争う声が聞こえてもこの少女が目を向けると争いはぴたりと止まるという現象を幾度となく見かけていた。
「そうだ!ねえ、携帯電話みせて!」
 リーズも珍しがっていたが、人間界にもまだ誰もが持っているわけではない通信機を6人は持っている。
 一応人間界の文化レベルに合わせたおもちゃのようなものだったが、それでもその技術は人間界にはまずない高度なものだった。
互いに連絡を取るために持っているのを彼女に見つかり、秘密にする代わりにいつでも見せてという要望にこたえると約束したのだ。
「うちのお父さんが買ったんだけど…やっぱりこっちのほうが凄いなぁ…。やっぱり海外は違うんだねぇ。」
 パチパチとひとしきりいじると使いかたがわからないやと返す。
天界ではモノクロの小さな画面というものが古すぎて存在せず、たったこれだけの機能にそんなでかいカバーなのかといい、これ以下のはプライド的にも無理と基本色で構成された鮮やかな画面に小さなボディー。
この通信機間だけでしか連絡は取れないがまだ人間界には早いものだ。
 
 
「黒内さん、以前言っていた力というのは使った後具合が悪くなったりしないですか?」
「ん〜…特に。でもまえすっごくイラついて廃材蹴って割っちゃったことあるんだよね。
よくわからないんだけどねぇ…。でも私のこの変な話、信じてくれるなんてやっぱり変わってる。」
 誰に言っても信じてもらえなかったのに、と笑う美樹に3人はアハハと笑った。
信じるも何も魔法などが身近にあるのだから魔法のないこの世界のほうが信じられないくらいだ。大体その中でも異端的な能力を持つアキラと暮らしているのだからよほどのことでは驚かない。
もっとも破黒によく似たリーズのことで驚くのは例外だと3人は思っている。
 
 そのうち話があるとアキラとリーズが離れ、リザがその後を追う。
「そうだ。なんかその力で人のことわかるって前言ってたけど、あの二人からはどんな感じがするんだ?」
 ジャックに聞かれ、ん〜と悩む美樹だったが見直すようにアキラとリーズを見つめると頷く。
「そうねぇ…リーズさんはすっごく大人な感じがして言葉はきついけど優しい感じがするなぁ。でもなんか時々内側からいやな気が出てくるというか…なんかそんな気がするよ。」
 そのいやな気はあんまり関わりたくないんだけどねぇという美樹に、まさかリーズもアキラ同様に別の魂がいるのかと思うが、そうそう多重魂いるはずもないと否定する。
「んでアキラは…なんだろ。あんまり言いたくないから本人には言わないでほしいんだけど…なんか生きてる気配がしないんだよね…。
それに目を閉じても集中すれば人の気配とかいろいろわかるんだけどね、アキラの場合すっごく小さいしそれに細長い物としか見えないんだよ…。」
 こんなことないんだけどなぁという美樹に、アキラは龍だからなぁと思うがとてもじゃないが小さいものではない。
 一体何なのだろうかと首を傾げるが、3人にはそんな力はないため確かめるすべはなかった。