四節・・取引

そして雪の降る季節になり、このまま行動を起こさないんじゃないかと思っていた。
そんな曇り空の下、リザを含めた5人の周りに結界が張られ、アキラとリーズが対峙する。
 するとみりみるうちにリーズの顔つきが変わり髪が短くなる。
紛れもなく3人が知っている…そして恐れている破黒に違いない。
あのリーズがまさか本当に破黒だったのかとアキラに対する不信感が募る。
 
「一時の再会はどうだったかな?アキラ。」
「破黒…そろそろとは思っていたが大分遅かったようだな。気遣ってくれたのか?」
 戦闘体勢に入ったわけでもなく無造作に構えるリーズとアキラだが緊張感が辺りを包み込む。
 
 
 アキラは外していた首輪を取り出すと引きちぎる。
それに答えるようにジャックたちの周りにロロイやキフィーなどエージェントたちが現れた。
「なっなっなによこれ!?」
 当然驚く美樹だがそこはメリッサが説明する。
信じられないようだが自分の持つ力が関係しているといわれ、うまく回らない思考のまま頷く。
「一体どういう状況なんだ?この結界から外に出られん…。」
 結界を押すエージェントだがそこから外へは出られない。
 
アキラ達の周辺も結界が張られ2人の戦闘が始まる。
破黒はどこからか薙刀を取り出し振るう。
それをアキラは何時から持っていたのか金龍の剣で受け流す。
時折呪文が唱えられているのか足元が爆破され凍りつく。
そんな中、アキラの怪我は増えているが破黒はいまだ無傷のままアキラを柄で殴る。
アキラも決して劣っているわけではなく、むしろ与える攻撃の回数は多い。
だがどれも寸前でとめるか薙刀を狙うなど、破黒には当てないようになっていた。
 だがその状態も常に出来るわけでもなく、徐々にアキラは押され始め2人は一度離れる。
「苦しいかアキラ。いいのだぞ?攻撃しても。今回は特にルールを決めていないのだからな。」
 くつくつと笑う破黒にアキラは睨みつけるだけで返答はしない。
 
ただ何かを考えるように目を閉じ剣をしまった。
「取引だ。力とマカクはくれてやる。俺にはリーを攻撃することはできない。解放してやってくれ。」
「ほう?力だけでなくマカクまで…いいだろう。」
 突然アキラが取引だというと破黒は楽しげに笑い承諾する。
慌てて反論しつつ美樹を護るため動こうとしたが、3人を含め体が動かない。
恐怖と困惑で動けない美樹に破黒が近づくと手をかざし赤い光を発した。
眩い光が消えるとそこには美樹が力なくその場に倒れている。力を抜き取られ、今まさに魂が離れようとしていたのだ。
術が解かれ、動けるようになったが誰もがその場を動くことができない。
我を取り戻した時、美樹の傍にはアキラは座っていた。