そこに突然レオのかばんから何かが飛び出しアキラと破黒に近づく。
「ふにょ!?戻ってきてふにょ!」
 慌ててレオが手を伸ばすがふにょはそれをかわし漂い飛ぶ。
「ふにょ…?まさかレイ…アキだめ!!」
 破黒はなぜアキラがその場にいるのかと眉をひそめていたが、リザの叫びに目を見開く。
「貴様まさか…蘇生の…転生の力を使う気か!!!」
 
 
 ふにょがとめるようにアキラの傍に寄るが、眩い光に阻まれ近づくことができない。
破黒もまるでアキラをとめるように手を伸ばすが光に弾かれ触れることができない。
「ネルもディールも多用しなかった力だぞ!!存在そのものを消すつもりか!!」
 光を浴びた破黒に背の高い男の姿が重なり、赤い雫型のピアスをしたその男は己の変化に気が付いていないのか手を伸ばし続ける。
アキラは目に入っていないのか、それともまったく無視をしているのか、
美樹に手をかざし静かな…それでいて確かな声で禁忌の呪文を唱える。
 
 
「我が秘められたし太古の輪廻の力よ…。
    我が声に耳を傾け…我が意思に従え。
我が手にしたる時の歯車を今一度…
    我が支払いし代償は…色。時に捧げん。
彼のものをあるべき時へ…
    進みたる時へと動かしたまえ。」
 
 
 アキラから発せられる光が美樹に吸い込まれ彼女は大きく息を吸い込む。
ふらりと立ち上がるアキラの顔色は蝋より白い。
エージェントらが詰め寄るより先に破黒…いやいまや見知らぬ男となったものが胸倉を掴み持ち上げた。
「貴様!何をしたのかわかっているのか!!」
「ユリシア…わかっている。彼女を蘇らせただけだ。そしてこの力に関することも消し去った。それだけのことだ。」
 ユリシアと聞いたレオはジャックたち同様信じられないと、目を見張った。
邪神ユリシア…。
まさかその本人なのかと震えが出る。
ユリシアは手を離すと一歩下がった。
 
「契約違反だ…。私の許可なく…死を近づける術を使った罰だ!!」
 魔界へと通じる戸を開きユリシアは消える。その後をアキラが追いその場には3人とエージェント、そして息を吹き返した美樹が残された。
「なんなんだあいつは!!力は危ないとかいっていたはずが…自ら渡すとは…。」
「アキを悪く言わないです!アキはずっとずっと天界のために力を使っていたです!」
 キフィーらが美樹を見ている間に幹部らは口々にアキラを罵倒しだす。
それを鎮めたのはリザの怒鳴り声だ。
「魔族が一体何のようだ!貴様らとあいつはぐるだったんだろうが!!」
「ちがうです!私たちはただ、アキの幼馴染です。
ユリシアが天界に対し地を揺らすのを止めていたのは誰だと思っているです!
嵐の元となる風を送り込んだのを鱗がはがれるのをかまわず雲に入り散らしたのは誰です!義理の息子であるガンを蘇らせ、2度と魔生物が他を襲わないよう、
アキ以外には力を出さないようするため血と肉を提供し続けたのは誰です!」
 言えないからではなく自分が決めたことだから言っていなかったというリザに幹部らは言葉を失う。天界で災害が起きるときアキラは常に…どんな状態であれ外に出ていた。
巨大な積乱雲は思ったほど被害は出ず、2・3日アキラを見なかったのはなぜか。
魔生物の出現が減り、ほとんどをアキラが退治していたのはなぜか。
元の大人の女性の姿になったリザの涙にそれが真実なのだと知らされる。
轟くような雷鳴が聞こえ破黒…いやユリシアの開けた戸の向こうから聞こえる。