急いで戻ると事態は悪化していた。
アキラをとめるため2人の神がアキラから出たところであったのだが、様子がおかしい。
ほとんどの魔獣を倒したところでアキラは動きを止め、守りに徹している。
それはやられているのではなく、何か苦しんでいるように見えた。
 
【キエなイ…敵ノ排除……護りタイ。…リー…どこ…暗い苦しい助けたい…
助けて…護れなイ終わラナい…やだ…分かラナい…沈む…味方・敵識別不可…
殺戮実行…レお…じゃック…ぶらっど…おジぃちゃ…ミんナ…逃げて…】
 吐き出すようにして言う言葉には、無感情な声と苦しむ声が混ざっていた。
赤い瞳が揺らぎゆらりと構えるアキラにディールが手にした大剣を振りかざし飛んできた斬激を食い止める。
 アキラはそれに一声叫び体を震わすと白い鱗が赤く染まりネルが結界をつよく張る。
 
「この馬鹿力が!血が暴走してやがる。」
「早く止めてあげて!これ以上暴走したら…」
「紅龍はやっかいだな…。」
 笛を差し出すとひったくるように受け取りリーズは目を閉じる。
赤い龍に何か問題があるのだろうかと問おうとしたブラッドにリザは静かにという。
「姉さまが今アキラの魔力の波長を調べてますです。以前白龍は珍しいと言いましたですが、その理由があれです。
護る力を欲した白い龍は鱗を紅く染め、防御を捨てた攻撃型の紅龍になるです。
逆に破壊の力を欲した白い龍が鱗を青く染め、攻撃を捨てた防御型の青龍になるです。」
 感情が高ぶるとそうなるそうです。という言葉にロロイが首をかしげる。
「何故攻撃を捨てるんだ?破壊したいのなら必要じゃあ…。」
「仕方ないです。そんなことをすれば自分が死ぬです。本能で抑えられるです。
でも攻撃型になると護るものを想うあまり力に飲まれ暴走するです。」
 
 今のようにと言われいつの間にかネルとディールの出す縄によって動きを止められたアキラをみる。
護ろうとし、力を欲するあまり理性を失った本能だけで戦いを追い求めるその姿を。
 
「リーズさん、早く見つけてあげて!!でないと…僕らでも抑えきれない。」
「いっそこのままユーシアとやりあっても大丈夫だな…このおとなしくしろ!!」
 縄を引きちぎろうとするアキラに引きずられつつ踏ん張ろうとするネルは叫ぶように言う。
 歯を食いしばりながらそれができたら苦労は無いなと自嘲気味に笑みを浮かべるディールは地面にめり込むほど力をこめていた。
 2人の神が抑えているにもかかわらずディールでさえ引きずられるほどの力で暴れるアキラは体中から血を噴出しはじめる。
行き過ぎた力に体が限界なのだ。