引越しも終わり、レオとブラッドも数日おきに泊まるための日用品も持ち込まれ静まり返っていたアキラの家はにぎやかとなった。
そんなある日、思い出したかのようにアキラはジャックを呼び、書斎の奥へとつれてきた。
「ゼフィーさんがガンに残したこれを渡しそびれていた。」
 さまざまな道具が立ち並ぶ不気味としかいえない部屋の奥に刀賭けがあった。
2段あるうち1段にしか刀はないが、柄に施された銀色の刺繍を除いて鞘の先から柄まで黒い。
アキラが刀を抜くとその刀身までが闇を切り取ったかのように黒く、威圧感を感じさせた。
「元は帯刀していた物だが、ガンが改良したために肩にもかけられるようになっている。まぁお前の好きにすればいい。それとこれは魔刀(マトウ)だ。日本では妖刀とも言われているものだが記録には残されていないだろう。」
 
「妖刀って…まさか身につけたが最後、死ぬまで外れない。とか、抜いた瞬間気を失って目が覚めたらあたり一面血の海になっているとか…。」
 刀を戻し差し出すが、ジャックはゲームやテレビで見た妖刀を思い出し、受け取ろうとはしない。ふとアキラのポケットから人形が出てくるとそこからグラントが現れた。
「今の絶対説明不足だと思うんだけど。魔刀っていうのは魔剣の刀バージョン。
俺が石から生成した最高傑作。日陰刀(ニチイントウ)っていって日食のエネルギーを浴びた石から…」
 長々と説明を使用とするグラントをアキラが小突きとめる。
「これもグラントの作品なのかよ。」
「おう!ただしこいつは本来は2本揃っていないと駄目なんだ。こいつとは正反対の色をした白銀の魔刀、月光刀(ゲッコウトウ)と対を成しているんだ。
魔界でむか〜し作ったんだけどどうも俺が眠っている間に人間界にわたったらしくてさ、そこから今度は天界に…。
俺が言ったことのない人間界に言っていたってほんとうらやましいよ。俺ん時の人間界なんて文明がそこそこ進んでいた時で最後まで魔界が干渉していたアジアなんて駄目駄目だったんだぜ?」
 やれやれとため息をつくグラントに時代の差を感じ、ジャックは半ば感心する。
今の人間界は自分達の力だけの文明を築き、必要以上に進化をしない天界の科学力に追いつこうとしている。
いや、石油や石炭などのものがあるおかげで天界とは違い環境を破壊する文明を築いたというべきかも知れない。
何せ人間界には魔力が一部を除いてなくなってしまったのだ。
 
 
「その…月光刀っていうのはどこいったのかしらねぇの?」
「ん〜〜〜。たしかゼフィーがもっていたんだけど…あれはガンの弟んとこいったんだっけ?」
「あぁ、ルナか。しばらく連絡を取っていないな…。叔父だ。天界にはいないため甥とはいえ未成年者を他の界に引き取ることができなかった。」
 目を点にするジャックにアキラが説明をしたが頭には疑問符ばかりが残る。
「何で叔父がいること教えてくれなかったんだよ!」
「天界には住んでいないため戸籍にも載っていない上に…母親の輝夜さんの血を濃く受け継ぎ髪が濃い藍色だからだ。」
 だから何なのかと問おうとし、気がつく。天族の祖父との子で藍色の髪とくれば…。
「輝夜さんは人間界出身の人族と魔族のハーフだった。そのため以前出した課題で風の呪文を多く出した。輝夜さんの家系は風を使うのが得意だったからな。」
「じゃあ俺ってアキラよりもいろいろ血が混ざってるってこと!?」
 そうなるなと頷かれジャックは思わず座り込む。それならば一緒に住めるわけもなく、叔父として教えてもらえなかったはずだと悲しいのやら家族のことで脱力してしまったのやら大きくため息を吐いた。
これ以上隠していることはないかと訊ねれば無いはずだとなんともあいまいな返事が返ってくる。
 後日、レオとブラッドもジャック本人からその話を受け、驚いたものの親族がいてよかったねと明るい声が返ってきた。