魔獣でもこれほど大きなものはいない。
全長はだいたい100メートルは軽く超すだろうか。
それほどまでに大きく、堂々とした姿に驚きを隠せない。
血を採取するためどこか取れる場所はあるかという研究員にアキラは長い首元に爪で傷をつける。
鱗を調べる研究員はその下の皮膚がどうなっているのかと問う。
『鱗と皮膚で並大抵物では傷はできない。特に人が作った人工物では鱗は剥がせてもその下の皮膚までは無理だ。ただ無理やり鱗を剥がされた時に一緒にはがれることがあるな。』
ひとしきり終えた所でアキラは再び光に覆われ元の姿に戻る。
体についていた器具はそのままついていたのか剥がすとローブを羽織った。
いつの間にか勾玉をつけていたらしく髪は白い。
「お疲れ。現時点でいえるのは意味不明。かな。核は無いんだろ?映像もないし…。」
「龍に核は無いな。心臓がある。魔生物にも一応あるが核ほど重要ではない。
核は一種のエネルギー集合体だ。そこから魔生物は生きるに必要なエネルギーを受け、肉体を維持するために少量の食事を取る。」
髪を結いなおすと3人とゴークがいるところへと向かってきた。
「あの首輪、最終的にこれに変えてくれたらしいですね。」
「どうしても勾玉が見えないと不安だという意見でそんなに短いが…効果は同じじゃろ?」
頷くアキラにゴークは微笑むと頭をなで、撥ね退けられる前に手を引っ込める。
手を振りジェニファーと共に戻るゴークを睨むように見つめていたが、不意に3人に振り向く。
「どうした?」
「いや〜…別に龍になっても驚くだけで怖くはなかったけどよ、すんげぇ特異体質だなぁって。」
「魔界にいる魔人はぜんぜんわからないけれどもその人より凄いんじゃないの?だってアキラさんは龍になっても戻れるし…。あ、ごめん。」
凄いというレオは思ったままを口に出したが、アキラの悲しい過去を思い出し謝る。
「別に気にしなくてもいい。レイナは人工的に作られたからだ。
そうだな…あれは生きるために神々に身を捧げた骸が素だ。レイナと違い自然発生した核を所有している。鍵となるものがあれば戻るはずだ。」
淡々としゃべるアキラから表情が伺えない。
死人なのかと聞けばそうだと頷き、レイナは赤ん坊だった頃死に、父親の魔生物技術による核を生成。
それを使い生み出したものだという。
違いはただ人が創ったのか神が創ったのか。それだけだという。
「神様なんていないでしょ。だって神話とかしかないし…。」
「天族は信仰が薄いからな。魔族は皆神をあがめ暮らす。そして讃える為に年13回の祭りを行い信仰を深める。それが魔族だ。」
レオの提案で海岸へとやってきた3人は魔界の話に興味深げに耳を傾けた。
13と言う数にいまいちぴんとこない風な彼かを呼び地面に印をつける。
「太陽の神、女神、風の神、緑の神と大地の神、水の神、生命の神、龍の神、海の神、時の神・転生の神、邪の神、宇宙の神、月の神、季節の神…細かくすれば更に一度に祭る神が増えるが代表的なもので言えばこれぐらいだろう。」
「前にもリチャードさんが言っていたけど邪の神様がなんで祭られるの?」
さも当たり前のように言うアキラにレオは驚き聞きそびれていた疑問を投げかける。
「邪の神というのは本来、生きるために必要な欲を管理し行き過ぎたものを吸い取る役割をしていた神だ。魔界の文献に何度か龍の神ともども出ているんだから間違いではないだろう。」
天界などで一般的に知られる邪神とは違うといわれ文化の違いを見せ付けられた。
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