「いつ戻るかわからないからとりあえず目隠しの呪文だけは唱えさせてもらうよ。
未来の僕は今の僕とあまり大差ないと思うから僕は気にしないけど…違和感があるの?」
 ガチャンと一際大きな音がし、アキラは座る。
何かを口早に唱えると3人に手をかざした。
まさか過去の世界にいるとは思っていず、まじまじと自分を見つめる3人に問うと首をよこに振り驚いていただけとブラッドが言う。
 
「アキラ、怪我してる!!」
 ようやく姿がはっきりとみえるとレオはその腕から見える傷に慌てて治癒呪文を唱えた。
傷から流れる血が減り、止まる。
「別に気にしなくてもすぐ消える。あぁ、そうだ。僕からも聞かないから未来のことは言わないで。
いろいろ面倒になるから。…そこでおとなしくしてて。面倒なのが来た。」
 未来のことは言わないでほしいというアキラはぱっと扉を見ると動かないようにと3人にいい、元々いた闇の深いところへと戻っていく。
その後ろを追うように鋼の鎖が続いた。
 
 
「今呪文を使ったな…。誰の許可あってのことだ?」
 扉が開き、男が入ってくる。
顔は丁度闇に隠れ見えない。
「それにここに上がる際歩く音がしたが…何か隠しているのか?」
「サー。そんなことはございません。サー。」
3人に気が付く風でもなく男は闇の濃い場所へと視線を向け足元から何かを拾い上げる。
「パンくずが落ちているが…今日は貴様の餌の日じゃないはずだ。鳥を隠しているだろう。」
出てこいと手に持ったものを大きく振ると鎖が動く音がし、アキラが投げ出される。
「就寝時間までは定位置に居ろと言ったはずだ。全員が寝静まるまで物音を立てるなと。」
 バチっと鋭い音が聞こえ青白い光が走り立ち上がるアキラを妨害する。
さっさと隠しているものを出せといわれ、アキラは立ち上がると3人の傍を通り過ぎ何かを両手でそっと持ち上げる。
小さな手のひらには怪我をした小鳥がきょろきょろと辺りを見回していた。
「化け物が鳥を助けるとはな…。しょせん貴様は化け物。焼き殺せ。」
 男はその鳥を見るなり非情な命令を下す。
その言葉にアキラは動揺していないそぶりを見せたが、その手は振るえ両手で包むも一向に呪文を唱えることが出来ずにいた。
やめてと叫びたいのを必死にこらえる3人の目の前でアキラの目は揺れ動く。
その手を突然男が包みアキラの手の中が赤く染まる。
断末魔の叫びを上げる小鳥だがそれも消え、男が手を離したときには灰となって消えていった。
 
 いまだ震える手を見つめていたアキラは蹴り飛ばされ、窓辺にぶつかる。
「人形の分際で命令を聞かないとは…。どういう了見だ?」
 一言も悲鳴を上げず、されるがままに蹴られ踏まれるアキラだが、男が塔から立ち去ると手先を動かして3人に張っていた結界を解いた。
「大丈夫!?今治すから待ってて。」
 再び治癒呪文を唱えるレオと加勢するジャックとブラッドに大丈夫と示すと、青い魔力がアキラを包みあっという間に怪我を治してしまった。
「いっただろ。すぐ治るって。あの鳥には悪いことをしたな…
僕みたいな化け物が拾っていなかったら治って大空を飛べただろうに。
今度からはリーかレイナにすぐ渡すか。」
 首に巻かれた首輪をさすりアキラはため息をつく。
「そんな!アキラが悪いわけじゃあないのに!!」
「そうだよ!アキラが悪いわけじゃない。」
 悲しい瞳を俯かせたアキラにレオとブラッドが声をかける。