必死に否定する3人にアキラは首をかしげた。
何故3人がムキになるのか理解できないというように。
「リーもレイナもそういう。だけど僕は魔人。人じゃあない。
魔力を糧に生きるものと君達、違いすぎるだろう?
ましてや僕にはこの先の未来が保障できない。
100歳まではきっと大丈夫だろうけど、その後は下り坂…つまりは徐々に弱っていく。
あぁ、そうだ。さっき聞かないといったけど、君達の世界で僕は何歳まで生きた?」
 長くは生きられないんだというアキラの顔は、自分達がずっと見てきた未来のアキラの顔を同じ表情で…悲しげに笑う。
「…今236歳。色彩が分からないけども元気にしてるよ。」
「そう。236歳か…君達にしたらなんて短い生涯だろうね。でも僕には十分すぎる時間だね。リーは?」
 どうしてる?とどこか不安げな面持ちで聞くアキラに3人は元気にしているよと微笑む。
つられるようにしてアキラも子供らしい笑顔を見せた。
 
 
「よかった。僕が色彩を判別できなくなるって言ったから、リーになにかあったんじゃないかって。」
 リーが元気ならそれでいいやと、大人になったアキラは見せないであろう上機嫌な様子で窓の外を眺める。
ダモスやマリアが言っていた昔から一筋だったというのが頷ける。
「アキラはリーズさんのこと好き…というかとっても大切な人なんだね。」
「うん。好きって言う言葉はわからないけど、何よりも護りたい人だよ。」
 ふと、アキラの夢はなんだろうかと問うとやや考えるそぶりを見せる。
あぁ、そうだとリーズが未来のアキラに聞いた内容で聞けばあぁそのこと、と頷いた。
「未来の僕からは聞けなかったんだね…。そうだね…。きっとその時には僕は魔核を失っているだろうから余命はとても短いね…。
じゃあ叶わないはずだよ。だって僕の夢は…。」
 寂しげな顔でアキラが振り向くと3人の目の前がだんだんとぼやけてくる。
声も遠くなり始め3人は必死にその声に耳を傾けた。
「      」
 
 
 
「やっと目が覚めたか。ここでのんきに寝られるとは…具合でも悪かったのか?」
 3人を起こし、別に体調が悪いようではないなと首をかしげるアキラ。
目の前に見慣れた姿のアキラを見つけ3人は目をしばたかせる。
先ほどまでのあれは一体。
「この研究所は明日から解体、墓は別の場所に移すことになった。長居する必要もないだろ早く帰るぞ。」
 3人が目を覚ましたことを確認すると先に階段の方へと向かってしまう。
「あ、アキラッ!」 
」 「どうした?」
 階段に降りかけたままレオを見る。
あの子供の姿が頭の中をよぎるが本人が言っていたとおり記憶にはないらしい。
なかなか続きを言わないレオにいぶかしげな目を向け、なんだと、再び問う。
その姿が子供の頃とあまり変わらず思わず噴出すジャックにアキラは目を向ける。
「なんでもねぇって。早く帰ろうぜ。」
「真面目に夢考えよっと。」
 あれは後で書き直さなきゃというブラッドにアキラは何があったのだと首をかしげる。
 あの悲しい目をした子供は恋焦がれても叶うことのない夢。
自分達は努力すれば叶うかもしれない夢。
『人になりたい。』
 それはあまりに儚なく切い夢。