アキラとリーズは早々に部屋に戻ったが、再会を祝い夜遅くまで語り合っていたガン達は翌日、昼近くに起きた。
寝すぎたと、3人を起こし階段を下りるとリーズが一人でリビングのソファーに座っていた。
「あれ?アキラまだ部屋?」
 体に異変があれば一日部屋にいることも珍しくなくなり、
いないことも多かったため後で様子見に行くかというジャック。
 
 だが、なんと言うか部屋の空気がいつもと何かが違う。
 ぴりぴりとした焦燥を抱きながらレオはリーズへとたずねる。
「ねぇ、リーズさん。どうして…アキラの傍にいないんですか?」
 そう、いつもならば部屋で休んでいるアキラをここにおろすか、
リーズが部屋に残っているはず。
背を向けていたリーズの正面に回った3人は思わず言葉を失ってしまった。
顔を洗いさっぱりしたガンは手に持っていたタオルを思わず落とす。
 リーズはペンダントを手に祈るように腕を組み、涙を流していた。
 
「アキラ、何時からいないんだよ!!親父は…親父は今どこに。どうして行かせたんだよ!」
「昨日の晩だ。あいつは…部屋に戻ってすぐに私を眠らせて…行ってしまった…。」
 引き止められるなら引き止めていたと、泣き崩れるリーズにガンはその場に崩れるように座り込む。
「さっさがしてみよう!もしかしたらどこかで倒れているかもしれないし…ね。」
「そうだよ!案外早くにユリシア倒して暢気に日向ぼっこしているかもしれないだろ?」
「そうそう。早く、行ってやろう。」
 悲しむ二人をどうにか励ますように言うとそうだなと、立ち上がり
ひとまず魔界に行こうといわれ車に乗り込む。
 行きがけにガンはゴークやキフィーらに連絡をいれていた。
 
 
「アキラはどこにいるかわらかない。しかし…核の場所なら分かる。」
 魔界で5人を出迎えたダモスは大きくため息をついた。
どういうことですかと詰め寄るガンをなだめ、あの儀式が行われた祭壇へと案内する。
 中は周りの石が淡く発光しているだけであまり明るくはない。
その中、ちょうどアキラが儀式の際立っていた場所に淡く点滅する石が転がっていた。
「まさか…。あれってアキラの核じゃ…。」
 言葉を失う中、ジャックがかすれた声で言うとダモスは残念ながらと頷く。
 
 突然、灯台に次々灯がともり入り口から石へ、石から転々と水面に火がともり滝を登る。
そして天井に向かい3つの煙が筋となって伸びていく。
それはやがて龍の形になると天へと消えていった。
 龍の咆哮が響き、レオ達の目の前で石が最後の瞬きを見せると砂となり崩れた。
そして風が緩やかに追うように吹き、砂を攫う。
思わず駆け出したレオにつられるようにジャックとブラッドが続くが、
風は砂を攫ったまま吹き抜けてしまう。
 残されたのは真珠のような白い、記憶球。
死ぬ間際に残すその人の人生を写すもの。
 3人を追ってきたダモスがそれを拾い上げると澄んだ音を響かせ、
中からはじけるように砕けてしまった。
 アキラは不協和音を奏でていた3人の神の音を元へと、己の命と引き換えに調節したのだ。