「輝夜姫とゼフィー殿の記憶に今私の記憶も入れておいた。
アキラが魔人になった…そのいきさつを。」
 ダモスの言葉に応じるように辺りは小さな…
そう、人間界の歴史の中でも古い農村が映し出されていた。
走る子供達は記憶にない、みている人々の体をすり抜け走り消えていく。
 
離れたところある家から小さな産声が聞こえる。
だがそれは弱弱しく、産婆はその子を一週間が山だと悲しげに言う。
「アキラは予定より早く産まれてしまい、短い命だと宣告された。
だから8日目の晩必死に生きるアキラに私たちは喜んだ。
でもそれが…2歳の誕生日に軽い風邪を引いたをアキラを連れて行かなかったばかりに…。熱があるわけでもないから連れて行くことも出来たのに…。」
 
 
《それじゃあ、アキラをお願いします。》
《アキラ、いい子で待っているのよ。》
 記憶の中のダモスとマリアは荷物を背負い、長老と思われる老人に預け手を振りながら道を歩いていった。その足元にいる小柄な子供が手を振り返す。
ダモスが言うにはそれがアキラとの最後だったという。
 
 
 場所が変わり、障子戸が開くと大きな部屋に肩まで伸びた黒髪に蒼い目をした小さな子供が座らされていた。
 その子供がアキラだと知らなければ着せられている着物の鮮やかさに少女だと思っただろう。
 入ってきた人を確かめるためか、震えて顔を青くしたアキラが振り返る。
黒い髪を揺らし、女性が止まる。
 
《お父様、このお子は…。》
《今日から我が子じゃ。して部屋はどうじゃ?》
 いかにも偉そうな太った男と嫌な顔をした家臣はその娘…輝夜にそういうと、彼女は確かめてきますと部屋を出る。父親と家臣の会話が聞こえ、アキラという名が出てきた。
《いずれは小姓として上様に謙譲するのもよいのぅ。》
《異国のものやも知れませぬが、他の国にこれほどの黒髪はおりませんでしょう。》
 嫌な計画を立て下卑た笑いを浮かべる父から逃げるように輝夜は歩く。
 
 
「あの子が…アキラさん?」
「あぁ、龍は2歳で全てがわかるという…。アキラも自分の状況がわかるほどには賢く…心は幼いままだった。」
 角に差し掛かった瞬間、城全体を揺らすほどの振動があり輝夜は来た道を足早に戻った。