二節・・夫婦

「まだ目が覚めないのか…。中の状態はわかるか?」
「えぇ。一度細胞レベルまで分解しましたが再び形をとったようです。
核を完全に取り入れたようですが…あの核ではもう何十年と生きるのは無理でしょうね。」
 リーズはフランクから聞くとそうかと俯く。状態がもう戻っているなら…と呟くと研究員らを外へと出した。
 
 
「私は前にあの記憶球を見て何日も泣いてしまったからダンはそれを考慮してくれたのよ。」
 何故一緒に行かなかったのかとゴークが問うとマリアは悲しげに答える。
そこへダモスがやってくるとゴークは顔を引き締め、睨むようにダモスをみた。
「初めまして。天王ゴーク殿。ご挨拶が大変遅れ申し訳ない。
237年ほど前に天界王女マリアを妻にと無許可で婚姻を結びました魔龍12代目ダモス=グレイス=ヴァルビスです。年齢は…138で眠っていたので息子より歳は下ですがアキラ=ノウライの父親です。」
「本当に遅れたな。今更断ることもできんのを承知の上で事後報告か?」
 父親対義理の息子の丁寧な言葉の中に見えない火花が飛び交っているように思えて3人ははらはらしながら見守っていた。
 
 そこへマリアが割り込む。
「天界にいるとき、文通している人がいるといったはずよお父様。
散々反対されたから怒って人間界に行ってしまったの…覚えてる?」
「なに!?まさかその文通の相手が…。」
 まさかの告白にゴークだけでなくその場にいたほとんど…キフィーまでもが驚きに目を見開き思わず口があく。
「昔私が流していたボトルメールをマリアが拾い、そこから始まりました。
人間界でアキラが生まれ、それから魔界側の籍に。人間界にいたのは魔界で戦争を止めようとしていた私がお恥ずかしいながら暗殺されかけまして…
城の者に騒ぎが終わるまでと。」
 まだまだ監督不足だったというダモスだがゴークはその状況に驚く。
一界の王が暗殺されかけるという事態はあってはならないこと。
 何故人間界に行ったマリアとダモスが出会ったのかずっと頭に引っかかっていたのが解け、命の危機というものを味わったことのなかったゴークは、戦時中いかに天界内が平和だったのかということがわかり、
常に命の危機を味わう孫や義理の息子というべき魔王が暗殺されかけ命の危機を味わったことがあるのに自分は何をしていたのだろうかと恥ずかしく思う。
 
 
「魔界に来てからアキラはユリシア神様に捕らえられ、理不尽な契約を結ばされ離れ離れとなってしまいました。不可解なことに私がマリアに会うことはいつ何時でもだったのですが…
アキラだけは私にさえあうのは難しく月に2・3日会うのがやっとでした。もとからユリシア神様はアキラにしか眼中になかったようで。
終戦の日は私が迂闊でした。とっさに封印術でマリアの命が奪われないようしましたが…
アキラの術で時空の狭間に落ちてしまい…マリアの術を解くことができなくなってしまいました。」