ハロウィン祭り

 
 

 
「え!?ローズ…ミーナちゃん達と街のお祭り行くの?」
 いつもどおり魔物がいないか巡回する最中、
昼間の話をしていたローズとソーズマンにプリーストは思わず立ち止まってしまった。
「うん。昼間誘われて。プリーストは行かないの?」
「えっと…その…。そ…ソーズマンと行くから向こうであったらね!」
「え?ぃったい!!!も〜〜足蹴んなよ…。まぁいいけどさ。お前と行くのかよ…。」
 首をかしげるローズに慌てたようにソーズマンの足を蹴る。
いきなり蹴り飛ばしたプリーストにソーズマンは不満そうに唸った。
 睨むプリーストに首をかしげるソーズマン。
ローズと顔を見合わせると女ってよくわからない、とそろって首をかしげた。
 
 
 お祭り当日。
「それじゃあ行って来るね。ユー、帰ったらいっぱい遊ぼうね。」
 シュリーにこれでよし、と衣装を調えてもらったローズは妹の頭をなで、
待ち合わせ場所へと向かった。
 後でしっかり洗えば大丈夫ということで一つに結んだ髪を揺らし、
マントを少しなびかせ村の入り口まで歩く。
「ごめんごめん。皆来るのはやいなぁ。」
 ごめんね、と少女達がいる輪に声をかけると妖精やエルフの姿をした少女達が振り向き、顔を赤らめた。
「やっぱり少し変だったかなぁ?いいのが見つからなくて牙はつけてないけど…。」
 変?と首をかしげるローズに妖精達は首を振る。
普段赤いバンダナで隠れている額には簡単な装飾品をつけ、
いつもは結んでいない髪を後ろに流して束ねている。
黒いマントに身を包み、白い首を浮き上がらせていた。
「吸血鬼ね!」
「ロー君白いから黒い服がとっても似合うわ!」
「こんな吸血鬼なら襲われてもいいかも…。」
 魔物に襲われちゃったら駄目だよ?、と首をかしげるローズに少女達は笑い、
手を引いて町へと向かう。
 町ではお菓子をもらいに行く子は小さな子達ばかりで、少し大きな青年達は仮装して町を歩いていた。
 
 
「ねぇね!ロー君!ナイフ投げゲームだって!あのぬいぐるみ欲しいなぁ…お願い!」
 背丈としてはあまり変わらないローズの袖を、エルフの子が引っ張り的当てへと連れて行く。
他の子もどこか違うところへ、と考えているが一番近いということもあり、黙ってみつめる。
 次はどこに行こうかと考えながら。
 エルフの子から一回分のお金を受け取ったローズは5本の短剣を受け取り、説明を受ける。
「吸血鬼さんよ、ルールは簡単!あそこに見える的の中心に当たれば100点。
 5本の合計が300点を超えれば賞品クマのプップさんをあげちゃうぞ!
 少し離れたところの的をさし、笑う店主はその細い腕で大丈夫か?、
とあまり気にしていないように言う。
 手元で何度か握るローズは少し考えると投げる位置へと進み出た。
中心は小さく、深く刺さってしまうと他の短剣が刺さらない。
 恐らくはそれが狙いだろうと考えられるため、ソーズマンがいれば金の無駄だからやめろ、
というがローズは的までの距離と風を目と肌で考えながら短剣を構える。
 
「ん?一本づつのほうがいいぞ?」
 ローズが5本手に持ったままなのに気がつく店主は首をかしげ、
投げ方を教えてやろうかと手を伸ばす。
 それに目もくれず、風のタイミングを図るローズは3本同時に投げると続いて2本別々に投げる。
 金属があたる音がしたと思えば軽く的に当たる音がし、店主はぽかんと的を見た。
「中心に3本当てるのこれしか思い浮かばなくて。」
 うまくいってよかった、と笑うローズに驚いていたエルフの少女はやった!
と歓声を上げ、偶然見ていた人々が拍手する。
「さっ3本とも中心に…いったい何がどうなって?」
 的を確かめる店主はまさか、と落ちている2本を拾うとローズと短剣を見比べた。
「えぇっと、たぶん其処に刺さるように投げると他のをはじいちゃいそうだったので、
 3本投げて、外に向いた2本を後から投げた2本で軌道修正して同時に刺さるようにしただけですよ。」
 途中ではじくのが遅れたのが心配でしたけど、というローズに店主は目を瞬かせるばかり。
「おじさん!早くプップ頂戴よ!」
 早く行こう、という少女達が催促し、
ぼんやりとしたまま賞品を渡す店主にお辞儀し、引っ張られるままに人ごみへと消えていく。
 その後通りかかったソーズマン達はナイフ投げの看板に一本ずつ投げよう!
と言うのを見かけ、首をかしげることとなったのだった。