だが、嫌なことは重なるもので…。
「そこのネーちゃん。一緒に花見しねぇ?」
 不意に声をかけられ、視線のみを其方に移す。そこにはまだ酒が抜けていないのか、それとも入ったばかりなのか、3人の男が立っていた。
(…路地でナンパってろくなもんじゃないだろうな…。ど〜しようかな〜。埋めるか飛ばすか…。)
 関わるのはゴメンだとばかりに通り過ぎる。
角を曲がったら速攻ダッシュで振り切ってやろうと足を速めた。
「ちょとぐらいいじゃんか〜。」
 さっさと走ってしまえばよかったとローズは再びため息をつく。
酔っ払いならばそう速くないと思っていたのも確かだが、行く手も退路も塞がれ深い気に眉を寄せる。
「ん?このねーちゃん耳なげぇぜ?」
 そういえばいつも巻いているバンダナを焦っていたためか忘れていた事に気がつき、内心舌打ちをする。
だが酔っ払いはそんな彼の心境には気付かず、背後からローズの耳を引く。
「本当だー。」
「ほんもんだな。この耳。」
「さわんじゃねぇ!」
 ばしっと音が響き、手を振りほどくとローズは目の前に居る男の横を無理矢理すり抜けようとした。
が、いとも簡単に捕まり普段の自分の力と同等に思っていたローズは本日2度目、顔を青ざめた。
普段抑えている力であっても本気を出せばそこらの人間よりは強い。
だが今現在…力を抑えたままでは酔っ払いの腕を振りほどくことができなかった。
「いてぇ…ねーちゃん威勢がいいのはいいけどよ、何も腕を叩かなくてもいいじゃねぇか。」
「はなせっつてんだろ!」
 抑えている力を解こうと呪文を唱えたいがその腕を捕らえられてしまい、男に蹴りを喰らわせる。
元々同性のため男の痛みは冗談じゃないほど良くわかる。
だがローズはそれにかまっている暇はなく、脱兎のごとく走る。
 
 
(まったく…まじでなんで今な目にあわなきゃいけないんだよ!!!なんだ?人間の神様か?絶対そうだ!!!!)
 男たちの気配を探りなるべくそこから離れる。
一難さってまた一難。
町に戻ろうとするたびに男の気配がし、再び路地をさまよう。
気配を探りながらの移動のため周りをよく見ていなかったローズは木箱に躓き、転んだ。
「女の身体って肌弱いよ!どうしてこれぐらいで怪我すんの!!」
 すりむいた膝でさらに移動する…背後を気遣っていたローズは何かにあたり、尻餅を突く前に腕を引かれる…。
 
本日3度目顔を青ざめた。
 
「血の匂いがしたけど・・大丈夫か?」
 朝避けていたロードクロサイトが立っていた。