「怪我のほうは大丈夫らしい。」
 何故かその後治癒呪文を唱えられた後も一緒にお茶することになり、ローズは冷や汗をかいていた。
ロードクロサイトを想う自分が女性の姿・・・・。
 普通ならばチャンスなのだが、彼にとってはあくまでも自分は男でないときがすまないらしく、ため息をついた。
 
「それにしても…こんな街中で…ローズ以外に魔界人がいるとは思わなかったな…。サキュバス…にしては血の匂いが違うような…。」
 テーブルに思わず突っ伏し、天然魔王だということを改めて認識する。
気付いていないのは幸いだが…。
だが…。
幾ら容姿が若干ちがくとも…
  80年の付き合いで毎日顔をあわせていたというのに…
それはないだろうとローズは心の中で涙を流した。
「そういえば・・名前は?」
「え!?あか…えっと…ええぇっと…。」
 出来ればこのままばれない方がいいとローズは言葉を濁した。
どう答えるべきか…。いっそ妹の名前でも…。
 
「ロードクロサイト様?それにローズ????」
 その声にはっと左を向けば白い服に身を包んだ…
「フローラ?どうしてここに?それに…この女性を知ってるのか?」
 さすが幼馴染と言うべきか大して動じないフローラは首を横に振り続けるローズを見てため息をつく。
「えぇ。その子はローズバードといって親戚の子でして…その子が一日人間の世界にいくって言うものですから心配できてみたんですの。あのド変態と呼び名が同じなのが可愛そうですが…ローズ、こっちにいらっしゃい。」
「はっはい!そっそれでは。」
 
 
 
「…で、朝起きたらこうなっていたと…。」
「解決策は!?」
「知らないわよそんなの。エイプリールフールかと思ったけどあまりに使い魔が必死だったものだからきてみたら…。
誰かのエイプリールフール…というか間違った悪戯じゃないかしら。それなら夜になって眠れば元に戻るはずよ…。ただ問題なのが…。」
「「ロードクロサイト様ね」だね」
 2人揃ってため息をつくと普段騒がしいローズが大人しい事にフローラはやれやれと、対策を練る。
「はっきりいって今のあなたは格好の餌食。サキュバスとしての血も薄いし元々インキュバスだから効果もない。
ロードクロサイト様の・・彼の好みは・・・わかっているでしょ。スタイルのいい年下。城に一度帰ったほうがいいような気もするけど…ハナモモが大騒ぎしそうで…」
 それだけはごめんだわと断わられる。
今日一日どうにか逃げてなさいといわれ、ローズは深くため息をついた。
 
 
「フローラの側にいなくていいのか?」
「はっはい。お仕事が忙しいそうなので今日一日だけ1人で行動する事にしました。幸いローキ様がいらしてましたから人間に殺されるような事はないと思いますし。」
 そういうものかな?と首をかしげるロードクロサイトに少しは思い出して欲しいと内心再び涙を流すが、本人には通じない。