「キスケが見事四天王の一角、魔獣王へとなりました。それと…
勇者はまだ現れていないようです。」
幻術師・妖術師等がいる第4軍を率いる四天王の女性、名はドゥリーミー=リリム=フローラ。
「勇者ったって、印が現れたものだ何てよく言うよ。魔界人になった僕ですらまだあるのに…。」
そういって彼は服をずらし、左胸を見る。勇気と希望の象徴を表す印がはっきりと描かれていた。
「勇者の紋を見せるのはかまいませんが、
その他の部分をロードクロサイト様に見せるだなんて目が腐りますわ。」
「年増には言われたくないよ〜。だからぁ黙れよ。」
互いにロードクロサイトからは死角であろう位置でにっこりと微笑みながら毒を吐く。
「あらぁ。私とロードクロサイト様は同い年ですわよ。」
「魔王様は皺もないですが貴女は・・ねぇ。」
「サキュバスは年取らないのよ?分かってる?インキュバスモドキさん。」
「半インキュバス・半吸血鬼だって何度も言ってるじゃんおばさん。」
菫色のサキュバスの瞳と青と黄の混ざった変態の瞳から火花のようなものが飛び散る。
流石に不穏な空気に気がついたのか、ロードクロサイトは振り返り首をかしげた。
「ローズ?フローラ?どうかしたか?」
「いいえなんでもないですわ。キスケのところにいかれます?」
にこやかに微笑むフローラ。彼の前では互いににこやかな表情を保っている。
先ほどのやり取りを知らないロードクロサイトはやや考えた後、いってみようと答える。
歩き始めるロードクロサイトの右横にフローラが寄り添い、
出遅れた(?) ローズは反対の左横に寄り添う。
「…あぁ、そうだ。ローズ」
「なんでしょう?魔王様v」
「あとで外行くか?」
何をとはいわない。
他のものは食べているが、彼ら本来の主食は1週間ほど前に取ってから今のところいっていない。
そのためこの城から外に出ないかと言う誘いだ。
「そうですねぇ…。いいですよwけど…いざとなれば僕の血でもいいですよ〜ww」
「いや…。そういうわけには…。大体一人からそんなに吸うことは出来ないから。」
「じゃあ最後に僕ので口直しを。」
「あらぁ。そんなもので口直しされていたのではお腹を壊してしまいますわ。
私の血ではおいやかしら?」
「…すまないフローラ。その気持ちはありがたく受け取っておく。ローズ、とりあえず頼む。」
「はぁい♪喜んでww」
本来主食であるはずの血の後味が嫌いなロードクロサイトは、同族でもあり、
元人間であるローズの血を飲み、口直しをしていることがしばしばある。
それを良く思わないフローラだが、自分の血は異性に対しある種の薬になるため、ため息をつく。
それはインキュバスであるローズも同様だが一応同性なため効果はない。
はずである。
「まぁサキュバスの血では仕方ありませんが…しかしインキュバスとはいえ変態の血っ…。」
「キスケ〜ww」
フローラのひざ裏を蹴り、ローズはそのまま巨大な滑車を回す小さな動物へと近づく。
その声に反応してか重々しい音を立てる巨大滑車から小動物が飛び出てきた。
背丈は向日葵の種6つ分。
そう。可愛らしいジャンガリアンハムスターだ。
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