一目散にローズの元へ行き…あらん限りの力で噛み付く。
「いやぁん♪そんなにうれしかったのかい?」
 見かけはハムスターでも立派な魔獣王。魔獣の頂点に立つ存在だ。
常人であれば噛み切られてしまうのではと思うが、其処は流石の魔界人。
身をくねらせ頬を緩める余裕があるようだ。
…多分そのような行動は彼だけだが…。
「キスケ、元気だったか?偉いなぁからだが小さいのに・・。」
 ロードクロサイトがしゃがみ、手を差し出すとローズの腕を掻い潜り肩へと駆け上がる。
彼にとってキスケはかわいいペット感覚なのだ。
 
 実際かわいいのだが、魔獣や魔人などがいる第3軍を率いる四天王の一角だ。
名をジャンガリ=ブルサフィ=キスケ。
ブルーサファイアと呼ばれる色に葡萄色のクリリとしたつぶらな瞳を持つ雌ハムスターだ。
もともとの飼い主…ローズは雄だと信じ込み、今でもそう信じている。
キスケは現在の大好きな主…ロードクロサイトになでてなでてと擦り寄る。
 小さなぬくもりに顔をほころばせるロードクロサイトはその小さな頭を優しく撫でる。
フローラも同じように撫でてあげればキスケは嬉しそうに鳴いた。
「よしよし。本当にロードクロサイト様がお好きなのね。」
 それを肯定するかのようにもう一声。和やかな空気が流れ…
ふと、突然キスケをつかむ手が現れた。にっこりと笑うローズ。
 
「エライエライ。本当に魔王様のことが好きなんだねぇ…。」
 目だけは笑っていない。
「そうだ魔王様、そろそろ行きませんか?」
「そうだな…。それじゃあキスケ、また晩餐に。」
 そういってキスケに手を振ったロードクロサイトが背を向けた瞬間、
ローズは滑車の方へとキスケを投げる。
 
ここは当然魔獣。壁に垂直に立つと威嚇するかのように唸り、姿を変えた。
といっても可愛らしいグレムリンのような姿だが。
それに目もくれずにローズは走ってロードクロサイトに飛びつく。
「魔王様ぁんvv」
「ぐっ…。」
 不意打ちに咽てしまったのは言うまでもない。